耐える国民性が出ている? 輸入車は上がっても日本車は「値上げ」せず「長期納車待ち」を選ぶワケ (2/2ページ)

日本では高い料金を支払うくらいなら長期の納車待ちを選ぶ?

 一方で、自動車だけでなく、日本企業の多くは“企業努力”の旗印のもと、コストダウンを進めて値上げすることなく、価格維持を優先するとはよく聞く話。

 ただ、自動車に限ってみても、たとえば取引先のある部品の供給が滞り、新車生産を甚大に遅延させてしまうとして、“スポット買い”で新規取引先から代用部品を購入すれば、それなりにコストアップになってしまうだろう。

 いまの自動車業界では日本メーカーだけでなく、世界の自動車メーカー間で部品の“奪い合い”が起きている。その最たるものが“半導体”である。

 ある事情通は「世界の中で日本メーカーの“買い負け”が目立っているように見える」と話してくれた。車両価格を値上げもせずにキープしようとすれば、ただでさえ部材費が高騰しているなかで、部品のスポット買いなども発生しているのならば、部材や部品供給元も「多く払ってもらえるところを最優先」となるのは自然の流れ。その点では、海外ブランド車の部材費高騰などによる値上げは、「可能な限り納期遅延を押さえる」という動きにも見え、それを海外の消費者はある程度許容しているようにも見える。

 ただし、海外メーカーも単純に値上げに走っているわけでもないようで、自社努力でコストダウン上昇分の吸収をはかろうとしているのは日本メーカーと同じ。日本的に言えば“総合的判断”で値上げを行っているようである。

 一方で、日本においてはマスコミの「値上げは悪」のような偏向報道が目立つように見えるなか、新車販売で見れば“日本の消費者は値上げするぐらいなら、長期の納車待ちを選ぶ”といった状況になっているように海外からは映るかもしれない。

 どちらが正しいのかという問題ではなく、何をしたら顧客満足度がより高まり、企業利益にもより貢献するのかという“視点”の違いからくるものと考える。従来の価格を維持したまま、コスト上昇分を吸収しようとすれば、いまのような“非常事態”では、なおさらどこかに“ひずみ(理不尽な負担/めぐりめぐって給料が上がらないという話もある)”が発生しやすくなるだろう。

 ここまであらゆる面で世界的な混乱が起こり、収束まで長期間かかるのを覚悟しなければならない現状下では(収束せずにニューノーマルになる可能性もある)、納期遅延というか“納車がいつになるのかわからない”といった事案も多発しているので、許容範囲での値上げである程度改善するならば筆者は受け入れてもいいと考えるが、日本ではその考え方が“少数派”なので、日本メーカーはそれを選択しない(単純な値上げ)ということになっているのだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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