この記事をまとめると
■2022年5月14日にモナコで行われるオークションに「マンセル・コレクション」が登場
■レーシングドライバーのナイジェル・マンセル氏の個人的なコレクションが放出される
■「マンセル・コレクション」には「セナ・タクシー」で有名なウィリアムズF1も含まれている
ナイジェル・マンセル氏のコレクションがオークションに
ナイジェル・マンセル、いうまでもなくF1とアメリカのCARTシリーズ双方でチャンピオンとなった唯一のレーシングドライバー。1953年生まれで、69歳の今もご健在ですが、断捨離でも決意したのでしょうか、彼のコレクションが有名なオークション「RMサザビーズ」にどっさり放出されました。
たとえば、1983年のF1「フェラーリ640」は、マンセルのドライブで2勝を挙げたマシン。ご本人にとってもフェラーリでのデビューウィンを飾ったモデルなので思い入れもひとしおかと。
さらに注目したいのが「セナ・タクシー」という愛称がつけられたF1マシン「ウィリアムズFW14」が出品されたこと。この呼び名は1991年のイギリスGPでの椿事にちなむもので、ガチなF1ファンでなくとも記憶の片隅にあるのではないでしょうか。
1991年のF1は、ウィリアムズFW14に乗るマンセルと、マクラーレンMP4/6を駆るセナとの一騎打ちといっても過言ではないシーズンでした(結局は僅差でマクラーレン&セナがコンストラクターとドライバーチャンピオンを獲得)。イギリスGPではマンセル渾身の予選アタックからポールを奪うと、鬼神の速さでレースを制しました。フィニッシュラインを通過すると、お約束のウィニングラン(クールダウンラップ)をしていたのですが、コース上にガス欠でマクラーレンのセナが立ち往生していたのです。
マンセルは減速してセナに近づくと「乗ってく?」くらいの声をかけたのでしょう。セナも「助かるわ」てなノリでサイドポンツーンにひょっこり腰かけました。そうして、セナはFW14をタクシー代わりにピットへと戻ったというのが「セナ・タクシー」と呼ばれる所以となったのです。
こうなると、マンセル&セナの両ファンはオークションから目を離せませんよね。ちなみに、お値段は2~4億円が予想されております。
もっとも「そこまではなぁ」というファンにはわざわざセナがサイドポンツーンに腰かけてるFW14のミニチュアカーも売っていますので、そちらで留飲を下げるのがよろしいかと。
ちなみに、このクールダウンラップでガス欠、あるいはマシントラブルで止まってしまうというケースはわりと多く、セナのようにピットまで乗せてもらうシーンもいくつかありました。1995年にはシューマッハがアレジを、2013年にはアロンソがウェーバーをピックアップしてピットまで送り届けています。しかし、アロンソとウェーバーの時には、FIAから「危険行為」と見なされ、アロンソは戒告処分を受け、ウェーバーは次戦での10グリッド降格というペナルティを科されてしまったのでした。
それまでは大目に見られていた「タクシー行為」ですが、この時にはペナルティ対象へとルール変更されていたのですね。
ともあれ、レース中は鎬を削るライバル同士が、チェッカー後に仲のよさげなシーンを見せてくれたのは、なんともほっこりするもの。それだけに、同時に出品されるフェラーリ640よりも、セナ・タクシー(=ウィリアムズFW14)の方が高値で落札されてほしいと願うのは決して筆者だけではないでしょう。