日本の道は「歩行者」にとって危険な場所も多い! ドライバーの努力だけじゃどうにもならない交通事故の現実 (2/2ページ)

歩行者優先でありながら道路の整備はクルマ優先でされている

 しかし、かつて1990年代初頭に、東京・日本橋から三重県・鈴鹿サーキットまで東海道を中心に470kmを歩いて行った経験からすると、歩行者にとって不都合な横断のさせ方や、道案内の不備があちこちに存在することを知った。要は、案内看板などもクルマ優先で整備されているため、歩いている人が道を渡りたいと思う場所に横断歩道がなく、しかも交通量が多く、安全な横断歩道や信号機のある交差点を利用しようとしても、何百メートルもあと戻りしなければならなかったり、数キロメートル迂回しなければならなかったりするような場所が存在するのだ。

 人は、一般的に時速4kmで歩く。数百メートルあと戻りするとしたら、数分の時間損失になる。健康のための散歩であれば、その分運動量を増やせると前向きに考えることもできるだろう。だが、用事があって急いでいるときの数分は、電車やバスに乗り遅れることになるかもしれないし、会合に遅刻することになるかもしれない。時間の余裕を持って出かけるようにといわれても、現実の暮らしのなかで常に実行できるとは限らない。

 歩行者の安全を守るには、まずクルマの運転者が歩行者優先であることを強く自覚することが大切だ。そのうえで、歩行者の通行を十分に考慮した横断歩道の設置が道路行政においても行われるべきだろう。

 また、鉄道の駅構内などで平然と歩行者に左側通行させることも再検討されるべきだ。出会いがしらにぶつかることを避けようとの意図かもしれないが、右側通行と左側通行が結局交差してしまうような導線をそのままほったらかしにしている鉄道事業者もある。

 日本における通行の原則は、クルマは左、人は右だ。そうした基本中の基本を徹底することから、運転者も歩行者も法令順守という気持ちが宿るようになり、そのうえで交通行政を行う人たちも、利用する人の立場に立った横断歩道や交差点の整備を心がけるべきだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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