セダンピックアップが世界の市場から消えた理由
さて、そのセダンピックアップであるが、現在では先に名前を出したクルマはすべて消滅しており、現在も販売が続くのは全世界に視野を広げてみても、それに近しいものとしてはダチア・ロガン・ピックアップの兄弟車であり、2008年まで南アフリカで生産されたサニートラック(輸出仕様名:1400バッキー)の後継機種でもある日産NP200程度ではないかと思われる。
いまやセダンピックアップは、日本はもちろんアメリカやオーストラリアでも絶滅したと言っても良いだろう。
ではなぜセダンピックアップは衰退したのか、それはひとえに純ピックアップの快適性の向上によるところが大きいだろう。もはやフルフレームのピックアップでも長距離の移動がしんどいといったこともなく、オートマ&パワステは当たり前でイージードライブも可能。さらに、ハイブリッドモデルも台頭してきており、燃費の面でも通常のパッセンジャーカーに劣るところはない。それでいて、トーイング時や重量物の運搬もこなせるとあれば、わざわざセダンピックアップにこだわる理由は見つからない。
しかし、実用性やタフネスさということを脇に置いて、そのスタイリングという面でいえば、セダンの背の低いフロントセクションと、すらりと伸びたシンプルな荷台をボディ一体成形としたセダンピックアップのスタイルはどのモデルも秀逸であり、絶版となって久しいいまもコレクターズカー市場で高い人気を保っているのも頷けるところ。サニトラ、マイティボーイ、日本でも「エルカミ」の愛称で親しまれるシボレー・エルカミーノなどに一度は憧れた方も少なくないはずだ。
かくいう筆者も20年弱、フォード・ランチェロというセダンピックアップと生活を共にしたが、パンテーラと同じ300馬力超の5.8リッターV8を搭載して、セダンのような高速クルーズもラクチンながら、3人乗りの1ナンバートラック登録のおかげで、自動車税がたったの8000円というピックアップならではのメリットを存分に享受することができたのもいい想い出だ。しかし、モノコックボディということもあり、重量物を積むのは躊躇われたし、何か税制以外でメリットがあったかといえば、特になかったりもした。
結局のところ、セダンピックアップというのは過渡期の存在であり、アメリカでは通常のピックアップが進化したことで淘汰され、「いまではピックアップ自体もすたれてしまった(孤軍奮闘するハイラックスを除けば)日本でセダンピックアップはどうなった?」といわれれば、進化・深化著しい軽トラックがそれに代わりつつある、というのが結論になるはずだ。