“久保劇場”となった復帰1戦目
もちろん、使用タイヤは唯一のブリヂストンで、復帰1戦目となるツール・ド・九州で素晴らしい走りを披露していた。
「2年間もマシンを放置していたので準備をしたんですけど、レッキを終えた段階ではペースノートもグダグダの状態。それもあって、SS1は抑えて行こうと思ったんですけど、思った以上にグリップしていて楽しかったので夢中で走りました」と語るように、久保はオープニングステージ、SS1でいきなりベストタイムをマークした。しかし、「SS2でタイヤが厳しくなっていたのでちょっと抑えていったんですけど、失敗してリヤバンパーをぶつけてしまいました」と語るようにSS2で5番手タイムに失速している。
それでも久保は「その後はタイヤを労わりながら走りました」と語りながらもSS3で2番手タイムを出したかと思えば、SS4は5番手タイムに沈むなど、浮き沈みを繰り返しながら、クラス4番手でレグ1をフィニッシュ。
この“久保劇場”は計6回のSSが設定されたレグ2でも続いた。SS5、SS6で4番手タイムに出遅れたものの、SS7では再びクラストップタイムをマークする。SS8では5番手タイムに止まるものの、SS9では2番手タイム、SS10では3番手タイムをマークするなど乱高下を繰り返し、最終的にJN3クラスの5位で完走を果たした。
「無事に完走できました。レグ1はSS2でミスをして、それが最後まで響いた感じでしたが、レグ2はタイヤをマネジメントしながらも、いいタイムを出せたステージもありました」と復帰1戦目を振り返る久保。「レースは“ぶつけた”とか、“ぶつけられた”とかあるけれどラリーは自分との勝負で面白い。ペースノートが難しいけれど楽しいです」と語る久保がどのような走りを披露するのか?
これまで数多くのドライバーが、レース競技からラリー競技へチャレンジしてきたが、成功したケースは極めて少ない。WRCではステファン・サラザン、勝田貴元、全日本ラリー選手権ではヘイッキ・コバライネンらが順応したケースだが、久保もそのひとりに名を連ねることができるのか?
不安定ながらもSSウインを獲得する久保のパフォーマンスに、少なからず筆者は可能性を感じた。この“久保劇場”がどのような結末を迎えるのか、ひとりのラリーファンとして注目したい。