この記事をまとめると
■雪上では走破力、踏破力の点で2輪駆動より4輪駆動のほうが優れている
■4WDにはパートタイム4WDとフルタイム4WDの2種類が存在する
■走破力ではクロカンタイプの4WDが最高だが、バランスではフルタイム4WD方式が優れる
雪道での走破力の高さはやはり4WDが優れる
厳しい寒さも緩み桜を楽しめる時期となったが、例年より降雪量の多かった今シーズンの冬を振り返ってみると、雪道に強いクルマは何だろう、と気になった人もいるのではないだろうか。これからクルマの買い替えを検討している方、あるいは新たに購入を計画している方、スノーロード走行が不可避な人は考える価値のあるテーマかもしれない。
ウインターロードの路面μは、高くてドライ舗装路の3割程度と考えてよいから、とにかく滑りやすい。このため、冬用タイヤ(スタッドレス)やタイヤ滑り止め(チェーン)が必要不可欠なことは言うまでもないが、走破力、踏破力の点で、2輪駆動より4輪駆動のほうが優れることは、よく知られるとおりだ。長さ、高さ、幅を持つ重量のある物体(要は自動車だが)を動かすのに、車体前端あるいは後端に設けられた2輪を駆動するより、前後4輪を駆動した方が駆動力は強く、走行する車体を安定させることもできる。
もちろん、2輪駆動方式(FF、FR、MR、RR)でもμの低いウインターロードは走れるが、より確実、安定した走行状態を望むなら、4輪駆動がベストの選択肢だ。しかし、4輪駆動にもいろいろな方式がある。4輪駆動車ならウインターロードの走破性能、踏破性能は、すべて等しく得られるのだろうか? この点について考えてみたいと思う。
まず、4輪駆動には、2輪駆動と4輪駆動を任意に切り替えて使うパートタイム4WDと、常に4輪を駆動するフルタイム4WDのふたつの方式がある。前者は基本的に2輪駆動(主に後輪駆動、まれに前輪駆動もある)で使用(走行)するが、強い駆動力が必要な場面は、ドライバーの意志(切り替え操作)によって4輪駆動となる方式だ。
基本的に駆動力配分は前後50対50。エンジンで発生した力を前後均等に配分する方式で、駆動力伝達は最大の方式である。ヘビーデューティ志向のクロカン4WDにこの方式が多く見られるのはこのためで、パートタイム4WDの方式を直結4駆と呼ぶ言い方もある。
ただし、旋回時に前後輪間で生じる回転差を調整する機構を持たないため、μの高い路面で旋回しようとするとスムースに回れず、ゴリゴリとした不快感、違和感を伴う動きとなり、旋回半径も大きく膨らむことになるが、これが低μ路の場合だと、タイヤのスリップによって軽減、あるいはほとんど感じられなくなる。
一方、駆動力は高いものの、旋回運動がきわめて不自然、違和感が生じるパートタイム4WD方式の欠点を払拭するため、あるいは路面μにかかわらず常時4輪駆動で走れることを目的として、フルタイム4WD方式が実用化されている。この方式は、前後輪の間に生じる回転差を吸収する機構(センターデフ)が設けられているが、4WDシステムの進化によって、現在ではさまざまな方式が存在している。
もっともシンプルな方式は、ベベルギアを使った通常のデファレンシャルギアと同じ方式のものをセンターデフとして使う方式で、平坦な路面(接地が安定した状態)では、非常にスムースかつ安定した走りが可能で、駆動力も無理なく4輪に伝達することができる。