【試乗】0-100km/h加速3.8秒の弾丸っぷり! マセラティの新作SUV「グレカーレ」は日本での成功間違いナシの走りだった (2/2ページ)

一気に吹き上がるエンジンの官能的な響きに酔いしれる

 試乗を始めて、まず驚かされたのはその剛性の高さだった。グレカーレはアルファロメオのステルヴィオと同様に、最新世代のジョルジョ・プラットフォームを使用して、正確にはそれをステルヴィオ比で50mmほど延長して生産されるモデルだが、ともかくこのプラットフォームの剛性感、そしてそれに組み合わされるエアサスペンションが生み出すフラットな乗り心地が素晴らしい。

 それは意識的に荒れた路面にタイヤを乗せてみても同様の印象で、トロフェオでは「オフロード」、「コンフォート」、「GT」、「スポーツ」、「コルサ」という5タイプのドライビングモードが選べるが、少なくともGTまでは高級サルーンをドライブしているかのような快適な乗り心地が、スポーツでもハイパフォーマンスサルーン程度の節度のあるフラット感を演出していることには感動させられた。ちなみに季節柄、試乗車にはウインタータイヤが装着されていたため、今度はぜひサマータイヤで走りを味わってみたいところだ。

 搭載される530馬力のネットゥーノエンジンは、どの領域からアクセルを踏み込んでも、瞬時に十分なトルクを発揮してくれる。アクセルペダルの細かい動きにも正確に反応してくれるから、今回は試すことができなかったが、ワインディングでもその走りは大いに楽しめそうだ。ちなみにこのトロフェオには電子制御のセルフロッキング・リヤデファレンシャルが装備されるほか、駆動方式は通常時の前後0:100から50:50に自動的に可変。そのトラクション性能はきわめて高いことが想像できる。

 トロフェオには標準装備されるエアサスペンションは、ドライブモードの選択等によって6段階のハイトが設定されている。車高を35mmローダウンできるパークモードなど、これもまた実用性の高さには大きく貢献する設定。逆にオフロードモードでは車高は30mm上昇。これだけでもSUVとしての走りのフィールドは確実に広がるのは確かだ。

 530馬力の最高出力はやはり数字から想像するだけのことはある。組み合わされる8速ATの巧みな制御と相まって、高速域まで一気に官能的な響きとともに駆け上がるタコメーターの針を見るのは胸がすく思いだ。実際0→100km/h加速をわずか3.8秒でこなし、285km/hの最高速を記録するのだから、このトロフェオの運動性能は相当なものなのだ。

 一方、こちらも短時間ながら試乗することができた、マイルドハイブリッド仕様のGTは、そのシステムの作動など一切感じさせないほどに自然なフィーリングを持つモデルだった。価格的にも、ここまで触れてきたトロフェオよりも、さらにコストパフォーマンスの高い設定になることは確かであるし、SUVとしての基本性能、すなわちキャビンの居住性や荷物の積載性能は変わることはない。

 300馬力の最高出力はこのサイズには十分な性能だと感じたし、ワングレード上のモデナと比較しても、最大トルクの450Nmは実は同一の数値なのである。違いはその発生回転数にあり、モデナの2000~5000rpmに対してGTは2000~4000rpmとトルクバンドがやや狭くなる。もちろんそれを実際の走りで感じることは難しいだろうが。

 マセラティ・グレカーレ。その直接のライバルとなるのは、もちろんポルシェ・マカンにほかならない。ここ最近、あまり大きなニュースには恵まれていなかったマセラティだが、このグレカーレをスタートとして、そのBEVたる「グレカーレ・フォルゴーレ」、新世代の「グランツーリスモ」と、これからはさまざまなトピックスが世界に発信されていく。

 ステランティスという巨大なアライアンスのなかにおいても、比較的独立したブランドバリューとキャラクター、そしてもちろん技術を誇る彼らの未来に大いに期待したいところである。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
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