1年以上は新型車を登場させることもできない
すでに日野自動車は、不正があった車両のリコール費用などとして約400億円の特別損失を計上、当期純利益についても540億円の赤字となる修正を出しているが、はたしてそれで済むのだろうかといえば疑問だ。
まず言えるのは、仮に正しい測定をしたからといってすぐに新しい型式指定を受けることができるとは思えない。とくに中型エンジンについては耐久試験において途中で部品を交換するという不正であり、すぐに技術的にクリアできるとは考えられないからだ。
さらに国土交通省がすぐさま型式指定の申請を受け取るとも思えない。不正防止の仕組みとして、防止措置が適切に講じられているかどうかを政府が確認するということになっているし、それが終了するまで該当メーカーによる他モデルの審査も一時中止になるというスキームだからだ。
まとめると、日野自動車は不正が判明した車種の生産もできなければ、新車種の型式指定を申請することもできない。最低でも今年度いっぱいは新型車が登場することはないだろう。
もちろん不正のない車種については継続生産可能だが、それについてもユーザーがあえて選ぶとは考えづらい。なぜなら日野自動車の不正というのは燃費測定に関するものであり、商用車ユーザーにおけるプライオリティがもっとも高い部分だからだ。カタログ値が信じられないとなれば、あえて日野自動車のモデルを選ぶ必要もなくなってしまう。
はっきり言って、日野自動車は存亡の危機にある。トヨタが資金投入するであろうから倒産することはないだろうが、他社との合併を視野に入れて再構築を図る可能性も否定できない。
乗用車ではないので、それほど話題になっていないようにも見えるが、日野自動車のディーゼルエンジンにおける不正はこのように自動車業界における大事件なのである。