この記事をまとめると
■トヨタがEV向けのMTを開発中との噂が出ている
■EVとMTは相性が悪く、あまり意味がないといわれている
■一方で高速巡航用のギヤを設けると電費が上がる利点がある
長年の疑問「EVにMT」は本当に必要なのか?
先日、一部メディアで報道された電気自動車用のMTトランスミッションをトヨタが開発しているというニュース。これは、現在存在しているMTを電気自動車に使用するというわけでなく、あくまで疑似的に電気自動車にMT風の機構を取り入れるというもののようで、いわばシミュレーターやゲームの中でMT車を操っているのと同じく、あくまで“操っている感”を楽しむための装備ということになるようだ。
では、電気自動車においてMTを用意するメリットは、操る楽しみ以外に存在するのだろうか?
そもそも電気自動車に使用されているモーターは、ゼロから最大トルクを発生し、回転数が上がっていくにつれて発生トルクが減少するという特性を持っている。そのため、ガソリンエンジンのように低速ギヤで引っ張るような走り方をするとむしろ遅くなるというまったく真逆のことが起きてしまう。
また、ゼロから最大トルクを発生させるため、一般的なガソリンMT車のように半クラッチを使いながら発進しようとすると強大なトルクによってクラッチに滑りが発生してしまって大きなロスになってしまうのだ。
そのため、一部のEVコンバージョン車両などは、ミッションはベースのMTを残しながらも、基本的には発進から3速か4速に入れたまま変速もせず、半クラッチも使わないで発進するというまったくMT車感のない走り方となっている。
では、電気自動車に多段ギヤは不要なのかというとそういうわけでもなく、高速巡行などでは一段高いギヤに入れ替えることで、電気自動車が苦手とする高速巡行時の電費性能を伸ばすことが可能となる。
現在の固定ギヤの電気自動車では、速度と比例してモーターの回転数が上がってしまうため、高回転域となる高速走行はどうしても電費が悪化してしまうのだが、高速巡行用のギヤを用意することで回転数を抑えることができ、電費が伸びるというワケだ。
しかし、過去にテスラ・ロードスターが2速ATを採用したことがあったが、ギヤが破損するトラブルが多発し、結局1速ギヤに戻すという事態があったように、強大なトルクを受け止め、かつシームレスに変速できるトランスミッションが必要となるだろう。