日独米のメーカーがロシア市場に再参入することは考えづらい
日系メーカーでいえば、すでにホンダがロシア市場からの撤退をアナウンスしているほか、スバルや三菱自動車はウクライナへの支援を発表するなど、ロシアと距離を置く経営判断をしていることは明らかだ。さらに、トヨタもロシア市場からの撤退を示唆する情報を発信している。
各社とも投資を回収できない可能性は高く、その意味では特別損失を計上する可能性も少なくないが、ロシアでのビジネスを続けるリスクのほうが大きいであろうことは明らかで、こうした判断は順当といえるだろう。
今後のロシア市場において、ブランドとして日独米の大手メーカーが参入することは考えづらい。その隙を突くように中国系のメーカーが市場シェアを拡大させる可能性もあるが、どうなるだろうか。
また、すでに日本経済に出ている影響でいえば中古車輸出がある。
日本(新潟や小樽など)からロシア(ウラジオストク)に船で中古車が運ばれていることはよく知られているが、今回のウクライナ侵攻による経済制裁を受けて、そうした中古車輸出は大減速している。
そのため、中古車の取引価格が下がっているという報道も出てきている。中古車業界にはバッドニュースだが、中古車価格の上昇によって欲しいクルマの価格が上がっていると嘆いていた一部のユーザーにとってはグッドニュースといえるのかもしれない。
いずれにしても、日本の自動車産業においてロシアが経済的・外交的に孤立することは、良くも悪くも影響は大きい。それも一時的ではなく、恒常的に続くと予想するのが妥当だ。
全盛期の300万台近い規模感からは半減しているとはいえ、ロシアの自動車市場は150万台規模であり、その市場を抜きに未来を組み立てるというのは、全世界の自動車メーカーにとって台数的にはマイナスになることは確実だ。
CASE革命など100年に一度の大変革期という非常に変化の激しい時期にある自動車業界にとって、ロシア市場を失うという予想外の展開は、さらに生き残りが厳しい状況になっていくだろう。ただし、ロシア市場については電動化にさほど積極的ではなく、電動化シフトの目標を前倒しにしていたメーカーほど影響は少ないかもしれない。
とはいえ、ロシアのウクライナ侵攻による経済的影響で、資源相場が全体的に上がっていることで、リチウムイオン電池や駆動モーターなどのコストを押し上げている面があるのは否めない。しばらくの間、電動車の価格帯は上昇トレンドになるといえそうだ。