姿はどうなろうとメルセデス”らしさ”は健在
試乗車はオプションのガラスサンルーフを装備していたので、車両重量は1900㎏にも達するが、加速はいかなるシーンでも不満なし。9速ATはいつどこで変速しているのかわからないほどスムースなのに、常時低回転をキープし、速度だけをスルスル上乗せしていく。
とはいえ発進時にはやはり1.9トンのボディが影響しているようで、モーターがアシストしていることを体感できた。逆に減速時のエネルギー回生はさほど強烈ではない。ISGやバッテリーの容量の問題もあるのだろうが、エコモードを選んだときはもっと強くしてもいいと思った。
タイヤサイズは前後とも245/45R18。同じエンジンを積みAMGラインを選択したステーションワゴンはフロント225/45R18、リヤ245/40R18で大差なかったが、車高アップに対処しているのか、乗り心地は固めだった。
ただそれは郊外の一般道を流れに乗って走っているシーンでの感想で、わずか1200rpmでこなす100km/h巡航では低速での固さが消え、フラットになる。
ステアリングは、この日乗った他のCクラスと比べると、前輪も駆動していることがコーナーなどで伝わってきて、やや手ごたえがあった。ちなみに4WDの駆動配分は45:55固定で、オンロードでも前輪が駆動している感じはわかる。
インパネ中央のスイッチで切り替えるドライブモードには、上限が110km/hのオフロード、45km/hのオフロード+が加わった。砂利道でオフロードモードを試すと、前後の駆動配分やトラクションコントロールなどを絶妙に調節してくれるようで、ホイールスピンをほとんど出さずに発進できた。
では同時に乗った他のCクラスと比べるとどうなのか。まずはボディやパワートレインなど共通点が多いC 220 dステーションワゴンアバンギャルドから触れていくと、車体が50㎏軽いので加速はさらに力強い印象であり、ISGのアシストはほとんど体感できないほどだった。
ステアリングは少し軽めになるものの、スポーツモードでなくてもスピードを上げれば適度な重さになるので問題なし。乗り心地はオールテレインほどではないが、フランス車に乗り慣れた身からすると低速では固いと感じた。ただ大きな入力になるほどしっかりストロークしてくるという、メルセデスらしさも確認できた。
オールテレインと明らかに違うのは、低めのドライビングポジションで味わう後輪駆動ならではのハンドリング。これはやはりSUVやクロスオーバーでは味わえない、独特の世界であるとあらためて教えられた。
セダンは1.5リッター4気筒ガソリンターボを積むC 200アバンギャルドAMGラインだった。このクルマのみオプションの4WSが装着してあった。
ガソリンでもそれなりにエンジン音は響いてくる。メルセデスのユーザーはこういう感触がお好みなのだろうか。最高出力は204馬力とディーゼルを上まわるものの、最大トルクは30.6kgm。3台のなかでは最軽量だが、それでも1700kgあるので、加速時のアシストの効果はいちばん明確だった。
セダンだけは過去に乗ったことがあるけれど、そのときと比べるとステアリングの手応えが格段に良くなっていた。スポーツモードでなくてもスピードを上げれば安心できるタッチになってくれた。
乗り心地はもっともしなやか。ノーズの軽いガソリンエンジンであるうえにボディ剛性も一段上なので、身のこなしは軽快かつ確実だ。Cクラスの基本はガソリンエンジンのセダンだと教えられた。AMGラインと4WSのない最新型を試してみたい。
現行Cクラスは価格が強気になった。セダンのC 200アバンギャルドでも654万円する。なので705万円のC 200 dステーションワゴンアバンギャルドにするなら796万円のオールテレインもありかと思う人もいるだろう。
ただそれはクルマ=メルセデスという思考の場合であって、僕はこのジャンルのパイオニアなのに価格は約半額というレガシィアウトバック、北欧生まれならでは心地よいセンスを提供しつつ200万円以上安いV60クロスカントリーに比べて、価格なりのアドバンテージはいまひとつという印象だった。
個人的にはセダンやステーションワゴンのAMGラインに相当するパッケージとして、いまだ根強い人気のGクラスをモチーフにした「Gライン」を設定してはどうだろうか。もちろん車高やタイヤなどをそれっぽいスペックにすることが条件だが、メルセデスのクロスオーバーならではの独自性をアピールできるはずだ。