もちろん、2ペダル車両ゆえに、独自のドライビングが必要となるようで、「ATは自動制御なんですけど、それに合わせた操作が必要になってくる。たとえばコーナーへ進入する際、3速から2速に落としたとしてもATモデルはワンテンポ遅れてきますが、その時にはアクセルを開けていたいので、どうやって辻褄をあわせるのか? それを見越したコントロールが必要になる」と河本選手。
つまり、MTとは異なるドライビングスキルが求められるが、その一方で、2ペダル車両によるジムカーナはドライバーにとってもスリリングで、山野哲也選手は「サイドブレーキレバーがないので、サイドターンが入ってくると、MT車両に対して0.5秒ぐらい遅くなってくると思いますが、めちゃくちゃ楽しいですよ。滑るクルマをコントロールすることは、MTだろうとATだろうと関係ないし、操作が減ったことから、コントロールにも集中できます」と分析。
さらに河本選手も「MTのほうが意のままにコントロールできますが、ATモデルで十分かつリーズナブルに面白い戦いができます。AT車両のジムカーナは難しくて、奥が深くて、面白いですね」と印象を語る。
この2年目を迎えたJG10クラスで開幕戦を制したのは下馬評どおり、ルノー・アルピーヌA110Sを駆る山野哲也選手だったが、マクラーレン600LTを駆る山野直也選手を抑えて、スバルBRZを駆る河本選手が2位、スズキ・スイフトを駆る安木選手が3位で表彰台を獲得したことは興味深い。
おそらく、この”下克上”は装着タイヤが演出しているのだろう。タイヤのサイズ的に18インチ以下であれば、ハイグリップラジアルを装着できることから、山野哲也選手によれば「必ずしも大きなハイパワー車が勝てるという訳ではない。実際、雨が降ったり、路面温度が低い状態であればスズキ・スイフトが速いと思います」とのことだ。
まさに全日本ジムーナ選手権のJG10クラスは、異種格闘技クラスとしての魅力が満載。実際、コースサイドで見ているとマクラーレン600LTやポルシェ911GT3のエキゾーストは迫力満点で、360度ターンの少ない専用コースで争われているとはいえ、ルノー・アルピーヌA110SやスバルBRZ、スズキ・スイフトのリズミカルな走りは一見の価値があることだろう。
もちろん、徹底的な改造を施した4WDのモンスターマシンが集うJG1クラスなど、その他のクラスも魅力満点。さらに、観戦に訪れたギャラリーのなかから抽選でパレードランの同乗走行を実施するなど、ファンサービスも充実している。
興味のある読者諸兄は全日本ジムカーナ選手権を観戦してみてはいかがだろうか?