アゲ系の波はポルシェやランボまで動かした! SUVじゃなくて「シャコアゲ」スーパーカーをメーカーが本気で考えているワケ (2/2ページ)

市販化を模索するその裏には中国市場の影響が見え隠れする

 一方、ランボルギーニはウラカン・エボをベースにオフローダー化。なんと車高は47mmも高くなり、そのぶん最低地上高をかせぎ、大径タイヤの装着を実現しています。

 いうまでもなく、同社のウルスで培われた悪路走破性能でステラート(掘り返す)という車名どおり猛スピードで地面をほじくりながら走ってくれることでしょう。

 LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)という全輪駆動やトルクベクタリングを(おそらく6軸IMUをともなって)統合制御するデバイスを搭載するため、おそろしく高くなってしまった重心位置のハンデも相殺できるのではないでしょうか。

 また、あくまでプロポーザルだと主張しているアルピーヌA110 SportXも、ファットなタイヤでリフトアップされたオフローダーカスタム。

 かつてモンテカルロ・ラリーで優勝したことのあるA110(1973年)へのオマージュとされ、最低地上高を60mm上げ、車幅も80mmの拡幅がなされ「ラリーバージョン」をイメージしたのだとか。フロントフードをブラックにペイントし、太陽光の反射を防いでいるのがそれっぽい雰囲気です。

 それにしても、各社ともエース級エンジニアが血眼になって重心位置を下げたり、Z軸モーメントの減少を追い求めて開発した珠玉のマシンを、いくらSUVブームだからって、なんでまたオフローダーなんかに! そんな疑問をお持ちになるのもごもっとも。

 乱暴な考えかもしれませんが、そこには中国の深刻な砂漠化問題が影を落としている気がしてなりません。アルピーヌはともかく、ポルシェやランボにとって、いまやかの国は最大のマーケット、環境問題にうるさい北米やEU、はたまた日本などそっちのけで中国マーケットに社運を賭しているといっても過言ではないでしょう。

 その広大な国の約30%が砂漠化。極端な話、1時間ドライブするうち20分は砂漠化した土地を走ると考えたら「やっぱ911でシルクロード走りたいよね」「ランボのV10、タクラマカンでいわせたった」となるのも当然かと。

 冒頭「来るところまで来た」とは記しましたが、もしかすると本当の意味でのスーパーSUVはこれからがスタートとなる次世代のトレンドなのかもしれません。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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