売れまくってるクルマは燃費もすごかった
そんなWLTCモードで、もっとも燃費性能に優れているのはトヨタ・ヤリスのハイブリッド車だ。シンプルな装備のエントリーグレードは、WLTCモード燃費が36.0km/Lとなり、なおかつメーカー希望小売価格が199万8000円と非常にリーズナブルになっている。ヤリスハイブリッドでは装備が充実したグレードでも35.4km/Lという省燃費ぶりで、いま日本で一番売れているというのも納得の環境性能といえる。
ちなみに、ハイブリッド機構を持たないガソリン車としての最良燃費を誇るのは、スズキ・アルトのエントリーグレードで、そのWLTCモード燃費値は25.2km/Lとなる。なお、現行アルトでは上級グレードがマイルドハイブリッド仕様となりWLTCモード燃費は27.7km/Lとなっている。
ディーゼルではマツダの1.5リッターディーゼル「SKYACTIV-D 1.5」を搭載するMAZDA2の6速MT・FF車が誇る25.2km/LというWLTCモードが最良の燃費値だ。奇しくもアルトとMAZDA2の燃費値は同じとなっているが、CO2排出量の観点からすると軽油(ディーゼル燃料)は排出量が多いので環境負荷は異なってくる。
●上記モデルのCO2排出量(WLTCモード)
・トヨタ・ヤリスハイブリッド:64g/km
・スズキ・アルト:92g/km
・マツダMAZDA2 XD:103g/km
日本政府だけでなく、世界的なトレンドとしてカーボンニュートラルに向かっているのはご存じのとおりで、CO2排出量を基準に自動車の環境性能を見ていくのが現在のスタンダードだ。燃費性能についても、ユーザーの感じる経済性ではなく、メーカーごとに課せられたCO2排出量の基準(いわゆるCAFE規制)をクリアするために燃費性能向上が必須となっている。
CAFE規制的な見方をすると、内燃機関の効率を上げたり、ハイブリッドによる電動化領域を広げたりすることでモード燃費を改善するよりも、電気自動車や燃料電池車といった排ガスを出さないゼロエミッションビークルのほうがCO2排出量削減効果は大きい。
さらにいえばトータルでの燃費性能は劣っていても、近距離であればゼロエミッションで走行できるプラグインハイブリッド車もCO2排出量削減には有効なソリューションといえる。もはやハイブリッドカーを含めた非プラグイン車の燃費改善だけでは環境対応にはならない時代となっている。
なお、現時点では電気自動車については電費性能よりも航続距離のユーザーニーズが高くなっている。航続距離を伸ばすということは多くのバッテリーを搭載する(≒車両が重くなり、電費性能にマイナス)ということだ。
歴史は繰り返すというが、なんだかんだ言ってエンジンを積んだクルマでは燃費はひとつの重要な指標となっているように、電気自動車が主流になってくると、電費に対するニーズが高まってくるだろう。そのときに、普段は使わないようなロングレンジに対応するために“無駄に電池を積んでいる”電気自動車の評価は一変するかもしれない。