ボディカラーが主役と言わんばかりの目立ちっぷり
3台目は、「スバルと言えばブルー」の概念を覆し、真っ赤なボディカラーを前面に押し出して登場した、レガシィB4 ブリッツェン。ツーリングワゴンと比べるとやや地味な存在となっていたセダンタイプのB4を大々的にアピールするため、なんとオーストリアのポルシェデザイン社とデザイン開発を進める新プロジェクトを始動。1999年開催の東京モーターショーで初披露されたのが、レガシィB4 ブリッツェンでした。
専用のフロントグリルやバンパー、リヤスポイラーや17インチアルミホイールなど盛りだくさんの内容で、内装にはBLITZENレザーパッケージとして本革シートや本革トリムなどを設定し、欧州スポーツセダンに勝るとも劣らない上質感とスポーティさを纏っていました。そして、ドイツ語で「稲妻がはしる(輝く)」を意味するブリッツェンを表現するボディカラーとして、高鮮度マルチコート塗装を用いた専用カラーのプレミアムレッドが設定されていたのでした。意外性もあって、真っ赤なレガシィは多くの人の心に残っているようです。
4台目は、モータースポーツシーンでも数々の栄光を勝ち取り、世界にも多くのファンを作った、ホンダの初代NSX。
実は、その初代NSXが登場する発端となった「Honda Sports」プロジェクトでは、快適なスポーツカーを目指す「シルバー派」と、快適性よりも速さを追求する「赤派」が議論を戦わせていたのだとか。結果的に、当初の市販モデルのコンセプトは「快適F1」になったものの、やはり純粋に速いスポーツカーを作りたいという技術者の思いは強く、オーナーからもサーキットベストの高性能バージョンを望む声が高かったことから生まれたのが、ピュアスポーツモデルの「NSX-R」だったのです。
そんなNSXのボディカラーには、2種類の赤がラインアップしていました。標準色として選べるのがニューフォーミュラレッド。そしてカスタムオーダーで選べるプレミアムカラーとして、モンツァレッド・パール。ニューフォーミュラレッドは明度の高い鮮やかな赤で、モンツァレッド・パールは深みのある濃い赤でした。
5台目は、なんと一時は新車販売比率の約6割もが赤を選んでいたこともあるという、マツダCX-5。初代CX-5は、マツダの新世代デザイン哲学「魂動(こどう)〜SOUL of MOTION」の第一弾として、2010年に登場したモデルでした。
その際、「カラーも造形の一部である」という思想のもと、魂動デザインを象徴するカラーの開発がスタートしました。マツダの歴史を支えてきた色とは何か、生命感や情熱というキーワードに合う色とは何か、などさまざまな角度から思索して辿り着いたのが、赤だったと言います。そこから試行錯誤を重ね、「人の心を掴んで離さない、世界一の赤」を追求し、ようやく生まれたのが「ソウルレッドプレミアムメタリック」。
ボディの陰影を美しく際立たせて、まるでクルマが生きているかのように見せる赤です。通常、白・黒・シルバーが多くの割合を占めるなかで、ソウルレッドは多くの人たちに愛され、マツダと同じ広島を本拠地とする広島カープのヘルメットにも塗装されるまでに。現在は、2代目CX-5の誕生とともに、ソウルレッドクリスタルメタリックへと進化しています。
ということで、赤いボディカラーには技術者の特別な思いが詰まっているものもたくさんあるんですね。それが私たちにも伝わり、より魅力的に見せてくれるのかもしれません。これからも、赤い名車の誕生を期待したいと思います。