今後のAMTの展開にも期待したい
逆に、シフトアップ/ダウンのマニュアルモードを持つ車両では、AMTをクラッチペダル操作レスのMT車と考えると、シフトレバーの操作だけでシフトアップ/ダウンが行えるので、運転操作が簡略化され、なおかつ自分の意図したタイミングでギヤのセレクトが行えるので、ある意味使いやすいAT機構と言うこともできるだろう。
基本的にMTと同じミッションを使うため、MTが用意されているモデルではコストを抑えたAT仕様車を設けることができるが、現代の日本車のように、モデルの基本がトルクコンバーター式ATのような状況では、新たにミッションを作らなければならない事情が生じ、かえって割に合わないATとなってしまう場合もある。
しかし、実際にAMTの採用が拡大しているのは商業車(ディーゼルトラック)の分野で、ベースにMT方式を持たないモデルも散見されている。ただ、小排気量ディーゼル+ターボチャージャーの組み合わせが標準化(高過給、高燃焼圧によって得られるダウンサイジイング化=排出ガス対策=省燃費対策)したトラックの場合、多段ミッションとの組み合わせは不可欠で、現状は12段変速が標準となっている。
一方、乗用車との組み合わせでは、システム構成が廉価ですむことから、現在もMT車の需要が高いヨーロッパの小型車で多く採用され、フィアット500やフォルクスワーゲンup!などでその採用例を見ることができる。
日本車はスズキがAGS(オート・ギア・シフト)の名称で商品化。アルトワークスに用意され、変速制御プログラムのチューニングによって変速スピードの短縮化が可能となり、マニュアルシフトモードがパドルスイッチで行える設定となっている。
構造上、AMTは簡易的なAT方式と見られているが、細かな制御に関して乗用車より一歩先を行くトラック用を見ると、能力としては十分実用に耐える(不満のない)内容の自動変速装置と言うことができる。この先、どんな展開を見せるのか、楽しみだ。