後期モデルでようやく品質が安定してコレクターズアイテムに
なにしろ10年近くも生産されたディアブロだけに、それに試乗した回数は、数あるスーパースポーツのなかでもかなり多い。もっとも緊張したのは、要求値をさらに上まわる325km/hの最高速が可能になったとスペックシートに堂々と描かれていたファーストモデル。まだまだバブル景気の最後(とは誰も予想していなかったが)とも言うかのように、1億数千万円のプライスタグが付けられたそのステアリングを握るのはさすがに緊張した。
ステアリングの背後にあるのは、誰がデザインしたのかは知らぬことにしておいてやるが(実際にはクライスラーのデザインチームである)。断崖絶壁の如く立ちはだかるインストゥルメントパネル。加えてシートは深く沈み込むバケットタイプだから、前方の視界はかなり制限される。
操作系はたしかに使いやすくなってはいるものの、やはりこの視界で1億円超えのスーパーカーに乗るのは正直なところ怖い。聞けばこれから並走の写真(カメラカーの直後に並んだりして走りの撮影をしてもらうことね)も撮影するという。断った、断固として断った。チキンとでも根性なしとでも、もう何とでも呼んでくれ。
このディアブロ、世界中でさまざまな笑える事件を起こしているらしい。元F1ドライバーの鈴木亜久里さんは、ランボルギーニから貸与されたディアブロをモナコの自宅まで乗って帰ったら、それだけでテールランプが溶けていたというし、ほかにもドアが開かなくなって金庫の如く閉じ込められた、電装系がトラブッた、と初期型のディアブロにはなかなか良い話は聞かない。しまいには天井が低いなどというヤツまで出てきてしまう始末だ。
そんなディアブロも、1998年に計画されていたフルモデルチェンジをアウディがあきらめさせ、もう一度最初からやり直しを命じて完成させたのがムルシエラゴ。その時間稼ぎのために登場した「6.0」以降の品質も安定し、コレクターズアイテムとしても人気を集めている。
2023年には、現在のアヴェンタドールの後継車も誕生すると噂されるランボルギーニ。ディアブロの価値は、これからさらに高まっていくのだろうか。興味は尽きない。