「踏切手前の窓開け」「時速100キロで100m」「ポンピングブレーキ」! なぜ教習所では公道で「使えないテク」を教えるのか (2/2ページ)

時代に合わせた教習内容のアップデートをしてほしい

3)ポンピングブレーキ

 ABSが普及する前の過去の遺物がポンピングブレーキ。危ないと思ったらとにかく全力でブレーキを踏んで、速度を少しでも落とし、運動エネルギーを小さくするのが危険回避で一番重要。ABSの有無にかかわらず、危険を感じたらフルブレーキを徹底させるべき。

 ポンピングブレーキには後続車にブレーキによる減速を知らせ、注意喚起するための「予備制動」の意味があるともいわれているが、ブレーキランプがチカチカ点滅するのは後続車にとっては迷惑なだけ。荷重変動が起きてクルマが不安定にもなるし、同乗者だってクルマに酔いそうになるはず。ブレーキを一発で決めるのが上手いドライバーの証でもある。

4)キープレフト

 キープレフトも教習所で口やかましく言われる教えのひとつ。もともとは、対向車との接触を防ぎ、追越しや右折等がスムースに行えるようにと、1964年の東京オリンピックの頃から奨励されはじめたようだが、キープレフトで走ると前方の視界は狭くなるし、出会い頭の衝突が躱しにくくなるリスクも増える。また、道端にはデブリ(ゴミ、破片、砂、砂利)も多く、それらを踏んでタイヤを傷める可能性も……。

 現実的にはセンターラインのある道路ならば、車線の真ん中を走るのが適切で、視界を広げるという意味ではむしろややセンターライン寄りのほうがベターとすらいえるだろう。

5)クロスハンドル

 ハンドルを大きく切るときに、両手をクロスさせるクロスハンドルも教習所の得意技!? 低速で、たくさんハンドルを切らなければならない、箱庭教習所では相性がいいかもしれないが、一般道では大舵角が必要な場面は多くはない。クロスハンドルを使うと、ハンドルを切りすぎたり、ハンドルを切った量がわかりづらくなったり、肩がシートから離れたりして、正確度が落ちる。パワステのついているクルマなら、送りハンドルがベストだろう。

 もちろんこうした旧態依然の運転操作だけでなく、運転の基本もしっかり教えてはくれるのだろうが、せっかく長期にわたり、高い費用を払って教習を受けるのだから、その教習内容も適宜アップデートを図って欲しい。

 たとえばヘッドライトの点灯時期(日没30分前や雨などの視界が悪い日。2021年10月からは新車はオートライトが義務化になっているがまだまだ手動式のライトのクルマも多い)や、ワイパーを動かすタイミングなどはもっと徹底して教えて欲しいぐらいだ(筆者の子供が昨年に教習所に通っていた際、ヘッドライトやワイパーは教官がスイッチを入れていたらしい)。

 より安全に直結したカリキュラムに作り直してもらえると、みんなが助かると思うのだが……。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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