ボクサーと180度V型はクランクシャフトで区別できる
さて、ボクサーエンジンと180度V型エンジンが真逆ともいえるピストンの動きをするのはクランクシャフトの設計が完全に異なっているからだ。
クランクシャフトとはピストンの往復運動を回転に変えるパーツであり、ピストンとはコネクティングロッドによってつながっている。そして、コネクティングロッドを「クランクピン」と呼ぶのだが、ボクサーエンジンの場合は、向かい合ったピストンにつながるクランクピンが180度違う場所についている。
一方、180度V型エンジンの場合は、向かい合ったピストンでクランクピンを共有している。そのため、クランクピンの位置がたとえば右側バンクに近づいたときには右側のピストン位置は上死点となり、反対に左側のピストンは下死点にあるといった動きになる。
つまり、水平対向エンジンを外から見ても、その中身がボクサーエンジンなのか、180度V型エンジンなのかは区別できない。しかし、クランクシャフト単体を見れば、ひとめでわかるというのが、このふたつのエンジンの識別ポイントというわけだ。
もっとも、経験則でいえば、180度V型エンジンというのは12気筒でしか成立しえないともいえる。主にフェラーリが量産した水平対向12気筒エンジン(512BBやテスタロッサなど)をはじめ、レーシングエンジンとして生まれた水平対向12気筒エンジンにしても、そのほとんどは180度V型エンジンとなっている。水平対向12気筒エンジン=180度V型エンジンと考えていい。
逆に、4気筒や6気筒においてはクランクピンを共有する180度V型タイプのクランクシャフトは成立しない。つまり、12気筒以外の水平対向エンジンは、クランクピンが180度ずれたクランクシャフトを持っており、ボクサーエンジンに分類されるといえるのだ。