個性的なデザインが魅力なのに普通に戻してしまったのはナゼだ
ホンダ・アコード (3代目セダン)
正直、こちらは初代インスパイアと違ってそれほど”深くはない”が、やはり、特定の世代には”隠しライト”=スーパーカーという刷り込みみたいなものがあって、その登場時のインパクトは計り知れないものがあった。この頃のホンダ車はモデルチェンジの際に、何世代かを飛び越えてしまったような異次元レベル(笑)での進化というか変化を遂げることがままあり、3代目アコード、3代目ワンダーシビック、2代目バラード(スポーツ)、2代目クイント(インテグラ)がその筆頭だった。
しかし、隠しライトを備えた4ドアセダンなどかつてあっただろうか(と思ったらアストンマーティン・ラゴンダがあった)。でも、さすがにやりすぎだと判断されたのか、3代目アコードのデビューから2年後、固定式ヘッドライトを備えたアコードCAが追加ラインアップされている。ちなみにCAはコンチネンタル・アコードの頭文字を取ってのネーミング。その名のとおりヨーロッパ大陸仕向の3代目アコードは、当初から固定式ヘッドライトでのリリースだったので、それを日本に逆上陸させたものだ。
続く4代目はメインマーケットである北米で隠しライトが安全基準の関係で認可されなくなったこともあるが、コンベンショナルな固定式のみとされたので、やはりセダンに隠しライトは度が過ぎていたのかもしれない。そう、隠しライト、というのはローカルワードの可能性があるが、リトラクタブル式ヘッドライトのことである。
トヨタ GRスープラ
最初はちょっとギョッとしたり、軽い嫌悪感を覚えたりするのに、時間が経つと「悪くない、というか、けっこう好きかも」、そう思わせられることが少なくない昨今のトヨタ車のデザイン。「好き」も「嫌い」も関心があるという意味では同義。だからその感情が反転するのもよくあることだ、というのは巷の恋愛心理分析でも目にする一説だが、感覚的にはそれに近いものがあるかもしれない。そんな昨今のトヨタ車のなかでも、GRスープラはその典型的な1台ではないかと思われる。
80スープラのプレーンな造形から一転、よく言えば抑揚に富んだ、悪く言えばやや煩雑なプレスラインや面構成が特徴のGRスープラのエクステリア・デザインには賛否両論があった記憶がある。以前、同車のプロジェクトチーフデザイナーである中村暢夫氏にインタビューさせていただいた際に、「好きか嫌いかがわかれることより、熱狂的に好きだと言ってくれる人がいるデザインを目指した」と仰られていた記憶があるが、賛否両論を巻き起こしたという事実は、多くの人がGRスープラのデザインに関心を持ったということの証になるはずだ。
GRスープラの場合、ダウンフォース性能に関してはデザインスタート時から厳密な要求値があったというが、Cd値に関してはデザイン先行で、結果として良好な数値が付いてきたとのことで、あの個性的なスタイルにはCd値も味方してくれたようだ。
ちなみにインタビューの際に、中村氏がお気に入りの1台としてお持ちいただいたミニカーはアルファロメオのSZで、異形のフォルムに超正統派のメカニズムを内蔵するという点で両車に共通項を見出した、というのは言いすぎだろうか。
三菱 ミラージュディンゴ
ずばり”マイナーチェンジで普通になった”系の三菱・ミラージュ・ディンゴ。ミラージュ・ディンゴが出た時は”ライトお化け”のように見えて、さらに吊り目顔とやたら大きなテールライトが”怖いゆるキャラ”のような雰囲気。
それが不評だったのか、発売から2年後のマイナーチェンジで”ビックリするくらい普通”の顔つきに変更されている。今となって見れば、マイナーチェンジ前のオリジナルのほうが遥かに素敵で、大した”ぶっとんだ感”もないのだけれど、新車の時の衝撃は一体何だったのだろう。