安全快適なクルマ社会の実現にはタイヤも重要な要素だ
タイヤ側面のゴムを厚くする方式のランフラットタイヤは、その分、ゴムが硬く弾力が失われがちになる傾向のため、乗り心地が硬くなる。そこで、GT-RやBMWなどでは、ランフラットタイヤ専用のバネやダンパーの設定が必要になる。タイヤ側面の硬さを前提に、乗り心地を悪化させないサスペンション設計をするのだ。
タイヤの硬さをいなすことのできないサスペンションでは、タイヤが路面の影響で弾みやすくなり、その分、接地性が悪化することにもなるので、単に乗り心地という快適性だけでなく、操縦安定性や加減速でのグリップ保持にも影響が及ぶことになる。したがって、ランフラットタイヤ専用のサスペンション設計が、ランフラットタイヤを使ううえで要となる。
一般的なランフラットタイヤのほかに、ラリー競技ではムースタイヤと呼ばれるものも使われた。タイヤの内側にスポンジ状のムースが注入されており、空気が抜けてもムースでタイヤ形状を維持する考えだ。
ランフラットタイヤは、専用のサスペンション設計を求めたり、まだ世の中に普及しきれていないため価格が高かったりなどの課題があるのは事実だ。しかし、すでにタイヤ交換をできない運転者も存在し、さらには自動運転が実用化すれば、タイヤがパンクして1台でも走行できなくなってしまうと、交通が滞りかねない。
つまり、コンバットタイヤと同様に、走り続けられることの重要性が高まるのである。
燃費向上の名目で、タイヤが重くなりがちなランフラットタイヤでない方がいいのではないかとの考え方もあるだろうが、交通の停滞を防ぎ、常に安全に走行し続けられるクルマ社会の実現へ向け、ランフラットタイヤの重要性を改めてきちんと検証しておく必要があるだろう。