日産フィガロが登場する海外ドラマも
スティーブン・スピルバーグ氏の初監督作品とされる、「激突(1971年)」は、主だった登場人物は一人だけで、追い抜きをされた乗用車を執拗に大型トレーラーが追い回すのみというサスペンス映画である。
主役ともいえる大型トレーラーは、“ピータービルト281”という車種。多くのトレーラーのなかでも、とくに“怖い顔つき”ということで選ばれたと聞いたことがある。追いかけられる赤いセダンは、クライスラー(現ステランティスグループ)ブランドのひとつ、プリマスのヴァリアントというモデルであり、当時では日本でいうところの“カローラ”的存在。トレーラーはあえて、より怖い顔のモデルを採用し、乗用車ではドライバーが一般市民であることを強調したかったのか、当時ではありきたりの車種が選ばれているところは実に興味深いところである。
ちなみに、ピータービルト281は、「激突」ファンのなかで個人所有している人も複数いるようで、無料動画投稿サイトなどで検索すると、アメリカで個人所有している人がドライブしている動画などを見ることができる。
ある海外ドラマでは(左ハンドル、右側通行の国)、富裕層家庭の夫人が日本から中古車で輸入した日産フィガロに乗っているという設定があった(数年前海外でフィガロが大人気だった)。「ずいぶん珍しい設定だなあ」と思ってみていたら、夜間に赤外線カメラでこの夫人の邸宅をスキャンしている時に、「このクルマは右ハンドルだから夫人は在宅している」ということになっていた。
筆者は世代的にも“テレビっ子”であり、いまもテレビドラマはよく見る。以前2時間ドラマでいくつかあった、“タクシードライバー”を主人公とした推理ドラマが好きでいまも再放送をよく見るのだが、どこまで細かくタクシー業界の日常業務を取材し、再現しているのかをチェックするのがとくに大好きである。その意味では映画化もされた“ねこタクシー”は、筆者はネコが大好きでありよく見ていたのだが、劇中のタクシー会社の様子が意外なほどリアルに描かれていたのが印象的であった。
クルマオタクの筆者としては、登場するクルマやクルマに関する業界の見せ方にどこまでこだわりを見せているかで、作品へのスタッフの作りこみへのこだわりの度合いを確認させてもらっている。時には戦前(太平洋戦争)の日本の設定なのに、戦後の乗用車やボンネットバスが出てきて興ざめすることもある。その時は「予算がなかったのかなあ」とか、「用意する時間がなかったのかなあ」などと考えている。