この記事をまとめると
■スバル初の量産型BEVを雪上で試乗
■bZ4XにはないAWDやSモードなど、スバル独自のシステムが搭載されている
■トヨタのbz4Xと姉妹車となるが、ソルテラにはスバルらしさが残っていた
スバル初となる話題の量産BEVを雪上で思う存分に試した
スバルがトヨタ自動車と共同開発したBEV(完全電気自動車)ソルテラがまもなく登場する。今回、そのプロトタイプ仕様車を群馬サイクルスポーツセンターの特設コースで雪道試乗をすることができた。折からの降雪で白く覆われた通い慣れた群馬サイクルスポーツセンターのコースが、まるでモンテカルロのラリーコースのような様相を呈している。非常に厳しいコンディションの中でソルテラがどんな走りを見せるのか、大いに期待させる試乗となった。
用意されたのは四輪駆動AWDモデルのソルテラだ。外観的にはトヨタのbZ4Xとほとんど変わりないが、フロントにスバルのマークが付いていたり、リヤのスポイラーの形状が若干異なるなどと多少の意匠の変更にとどまっている。
また、室内に乗り込むとインテリアの仕様もほとんど変わりない。試乗したモデルはブラックとブラウンのツートーンカラーの内装が備えられたおしゃれな仕様のモデルだった。ステアリングの上から望むメーターモニターやコンソール中央の大きな液晶パネルなどもbZ4Xと同じものだ。それもそのはずで、このソルテラは愛知県元町にあるトヨタ自動車の工場で、bZ4Xと同じラインで生産されるからだ。
コクピットに乗り込み見渡すと、そのインパネやダッシュボードなどの造形はbZ4Xと同じである。今回のこのソルテラは、GR86&BRZの時はトヨタと共同開発したものをスバルの群馬の工場で同じラインで生産していたのだが、ソルテラはトヨタの元町工場でbZ4Xと同じラインで生産されると言う。したがって、ほとんどのボディパネルや内装、またプラットフォームもトヨタと共用しているし、サスペンションなどの部品も同じものである。
ただ、トヨタはE-TNGAという名でこの電気自動車専用プラットフォームを呼んでいるが、スバルはE-TSGという別の名前で呼んでいる。また、トヨタでは回生ブーストと呼ばれるワンペダル操作が可能なモードスイッチを、スバルではSペダルと呼び変えるなど、細かな部分での相違点は多くありそうだ。
一方、パワートレインやバッテリーはトヨタと同じで、四輪駆動の場合はフロントには80kWのモーター、リヤにも同じく80kWのモーターが備わり、最大トルクはそれぞれ168Nm。トータルシステム出力としては、最高出力160KWで336Nmの最大トルクを発揮することが出来るとされている。
さて、1周の下見走行ののちに、雪道の群馬サイクルスポーツセンターのコースを走り始める。前日からの降雪で積雪量はかなり多く、1mほどの積雪があり、コース幅は車幅の1.5倍程度にまで細められてしまっていた。路面はほとんどが圧雪で非常にコンディションがいい。装着されているタイヤはブリヂストンの最新スタッドレスタイヤであるブリザックDM V3で20インチ235/50が装着されていた。
四輪駆動らしいトラクションの良さで、雪道で低ミューなはずなのにまったく車輪が空転することもなくスムースに走り始める。ややラフにアクセルを開けると電子制御のトラクションコントロールが即座に介入して駆動力制御を行うが、それによって挙動を乱したり加速Gが変化したりするようなこともほとんどない。
試しにトラクションコントロールスイッチをオフにしてアクセル全開加速を試みると、まずクルマが一瞬前に進んだあと後輪により多くのパワーが配分されて後輪がホイールスピンを起こす。それによって若干車体にヨーが発生するとフロントも駆動力が強まり、前輪でも引っ張りながら加速し続けていくというようなイメージに仕上げられている。
パワートレインとなるモーターは前後ともに車体のほぼ中央に設置され、左右のドライブシャフトも等長となった。これはスバル側のエンジニアが、スバル特有のシンメトリカルレイアウトにこだわり、あえてモーターを中央に配置してドライブシャフトを等長化するということに重きを置いた結果だという。また、スバルとしては最低地上高210mmを確保することに大きなこだわりがあり、その結果、こうした雪道での走破性も極めて高く、スバルのAWDモデルとして相応しい走破性を備えていると言うことができるのだ。
徐々に速度を上げてコーナーに向かいブレーキングを開始すると、やや制動Gに関しては物足りなさを感じる。低ミュー路であるということを差し引いても、やはり2トンを超える重量と重心の高さが制動Gには不利に働くということが言えそうだ。
このブレーキによる制動では心もとない雰囲気を補ってくれるのがSペダルである。Sペダルは最大0.15Gの減速Gを引き出すことができ、ドライバーはアクセルオフだけで適度な減速感を安定して得ることができる。他社には0.3Gまでアクセルペダルオフで減速Gが得られる電気自動車も存在しているが、スバルとしては最終的にはドライバーがブレーキペダルを踏むことで確実な制動と最後の停止をしっかりとコントロールするという関わりを重要視し、減速Gを0.15Gに抑えているということだ。
トラクションコントロールをオフにしなければ常に安定した駆動力が得られ、雪道であってもまるで一般の道と同じようなペースで走ることができる。コーナーにおいては減速をしてサイドスリップを極力抑える運転に徹することの重要性を残しているというわけだ。また、コーナー立ち上がりにおいてアクセルオンすると前輪側の駆動配分が増え、車体を引っ張ることでヨーレートを収束させるというような制御の仕方も感じ取ることができた。