個性を追求しすぎた結果、逆に個性がなくなってしまった
2台目は、特定のモデルというよりはマツダ車全般に言えることですが、デザイン統一によりどのモデルのフロントマスクを見ても、同じような印象を受けるようになりました。もちろん、現在のマツダ車のデザインは上質感やセクシーさがあって、ヨーロッパでも大絶賛されているほどですが、一般の声としては「どれがどれだかわからない」という人もちらほら。
確かに、実物を並べて見比べれば違いがわかるのですが、同じようなサイズの写真で見たり、高速道路などで遠くを走っているマツダ車がCX-5なのか、CX-8なのか、はたまたCX-30なのか、区別できないという声もよく聞かれます。そんな中で、MX-30だけは個性的ですぐに判別できるようですが、この先マツダ車のデザインはどうなっていくのかが気になるところです。
3台目は、初代が4ドアクーペというデザインジャンルを一躍世に広め、まるでビーナスのような美しい抑揚のあるデザインで人々を魅了した、メルセデス・ベンツCLS。低く流麗なルーフ、スッと一筆書きのようなベルトライン、ぎゅっと細いウエストのように絞り込まれたテールエンドなど、それまでのどのメルセデスサルーンにもなかった衝撃作と言っていいほどで、当時は賛否両論あったものの、結果的にこのCLSは大ヒットとなりました。
ちょっと後席の頭上はタイトだけど、やっぱりこのセクシーなデザインの魅力にはあらがえない! という理由で贔屓にしてきたユーザーが多いのですが、2018年に登場した現行モデルはなんと、ボディの抑揚がほとんどないシンプルな曲面デザインを採用。
最新SクラスやCクラスもそうした傾向となっているので、新世代メルセデス・ベンツのデザインを取り入れているのはわかるのですが、「あのセクシーな“くびれ”はどこへ……」とガッカリする人もいるようです。
4台目は、もうすぐ日本にも導入される予定となっている、新型のルノー・カングー。本国フランスの関係者も驚くほど、日本ではカングーのファンが多いのですが、それはやはり初代が作り上げた商用車ベースとは思えない独特のオシャレ感や、スライドドア車なのに生活感が出にくいこと、そして動物やペットにも通じるような愛嬌のある雰囲気、ゆるい感じ。それらが国産ミニバンやドイツ車にはない、カングーだけの魅力としてファンを増やしていたのだと思います。
ところが最新のカングーは、キリリと精悍な顔立ちに、プレミアム感さえ漂うスタイリング。あのペットのような愛嬌や、ゆる〜い雰囲気は影を潜めてしまいました。その代わり、ボディが拡大したため室内は広く、走りの安定感がかなり向上し、ラゲッジの使い勝手もよく考えられているようですが……。
果たして大変身したカングーは、日本で受け入れられるのかどうか、見守りたいと思います。
ということで、初代が大ヒットすると、エンジニアにとってそのフルモデルチェンジはかなり難しい仕事だとよく言われますが、いかがでしたでしょうか。デザインや雰囲気の個性を守りつつ、性能をアップしていく難しさは相当なものなのかもしれないですね。