コンピュータシミュレーションも積極活用されている
もちろん、クルマは安全でなければならない。だが、無暗な高速化や安全対策の強化は、新車価格を引き上げることにもつながっていく。
漫然と安全性を考えるのではなく、優先順位を明らかにすることも大切だ。運転支援機能をいっそう高め、もしもぶつからないクルマが完成すれば、衝突安全のための試験や衝突時の人命保護のための装備を減らすことができるかもしれない。しかし、絶対的な安全を本当に確保できるのかという確証はまだない。
もうひとつは、試作車の数を減らしても、より性能が高くより安全なクルマを開発できるように、コンピュータシミュレーションを積極活用することだ。これは現実的に採用が進んでいる。コンピュータ内で性能を達成したあと、念のために現物の試作車で事実を確認するやり方が行われている。
一方で、たとえば窓ガラスへの内装の映り込みによる前方視界の不良、ドアミラーへの映り込みが後方確認の邪魔になるといった不都合も生じている。コンピュータのなかでは窓への映り込みを十分に検証できていないためだ。
映り込みは、陽の差す時間や方角によって変わるので、それをすべてコンピュータで検証することがどこまでできるのかはまだわからない。しかし、それを実現しなければ、映り込みによって運転者が状況を見誤ったり、映り込みによって車載カメラが誤作動して運転支援が正しく行われなかったりなどの弊害が出る懸念が残る。
新車の登場が、より性能や機能を高め、また安全になっていくことは消費者の期待だが、そのために膨大な開発費がかかっていることも事実であり、野放図な高性能の追求より、程よい性能を長く使うクルマ利用の考え方も今後は求められるのではないだろうか。