この記事をまとめると
■欧州委員会は事実上、原子力やLNGによる発電を認める方針を発表
■EU加盟国内は大騒ぎとなり、強く反対する加盟国が出てきている
■今後PHEVやHEVも継続販売できる可能性が高まったと考えられる
SDGs実現への取り組みに反発する動きも
2022年2月2日、EU(欧州連合)の欧州委員会は、原子力及びLNG(液化天然ガス)を持続可能なエネルギーとして位置づけ、事実上原子力やLNGによる発電を認める方針を発表した。この方針にEU加盟国内は大騒ぎとなり、反対し提訴へ動くとする加盟国まで出てきているようである。
EUといえば、2035年に内燃機関車の全面販売禁止を打ち出すほど、“カーボンニュートラル社会の実現”に突き進んでいるのはすでにご承知のとおり。原子力発電は脱炭素発電といえるが、LNGは化石燃料であり、LNG発電ではCO2は排出されることになる。筆者はこのニュースを初めて聞いた時に、「EUのエキセントリックとも見えるカーボンニュートラルの動きに“ほころび”が見えてきたな」と感じた。
この報道のあと、さっそく2月10日にフランスのマクロン大統領は、フランス国内に原子力発電所を新たに建設することを発表、当初は6基を新設するとしていたが、その後最大14基を新設すると発表したとの報道もある。そもそもカーボンニュートラルへの動きは、EU内で完全に一枚岩で進んでいた話とも言い切れない状況だったので、“やっぱり”と思う人も少なくなかったはずだ。
電力供給において化石燃料発電を容認するような動きは、自動車の世界でもありえる話だと思っている。前述したとおり、EUさらにイギリスでは2035年に内燃機関車の全面販売禁止を表明している。しかし、この動きも発電のように“ほころび”が出てもおかしくないように見えてきた。つまり、「PHEVやHEVも継続販売可能にしよう」となる可能性が出てきたように見える。
アメリカ、バイデン政権は2030年に新車販売の50%をゼロエミッション車にするとしている。日本政府は2030年代半ばまでに、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)も含む、電動車のみを販売可能にするとしている。世界一BEV(バッテリー電気自動車)が普及している中国も2035年をメドに内燃機関車の販売禁止を進めるようだが、これは日本政府同様にHEVやPHEVも含まれるのではないかとされている。
つまり、EU域内だけ新車販売のゼロエミッション化を進めても、世界から見ればその実施エリアは限定的とも言えるのである。さらに、いまは欧米先進国による気候変動対策や持続可能な社会の実現(SDGs)などの欧米以外の諸国への普及の働きかけに対し、とくに新興国や後進国では「先進国同様の負担を求める動きは、新たな植民地政策のようだ」とも言われ、その押しつけへの反発も目立ってきているとも伝えられている。