技術の進化により高性能車は不死鳥の如く復活する
次に本格的な排出ガス規制が実施されるのは平成12年規制で、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物の排出量を昭和53年規制値から70%削減する厳しい内容だった。この規制は、平成12年10月1日以降に販売される新型車に適用され、それ以前に認可された現行販売車両に関しては、平成14年8月末までに対応しなければならない、という猶予期間が設けられていた。
このため、平成12年排出ガス規制値への対応に際し、高性能エンジンを積むスポーツモデルのいくつかが、生産・販売を中止する事態となっていた。R34型スカイラインGT-Rや80系スープラ、RX-7(FD3S)などだったが、昭和53年規制実施時とは事情が異なっていた。
昭和53年規制実施時は、メーカーに排ガス対応の技術がなく、有害成分を多く排出するスポーツモデルの生産中止はやむを得ない状況だったが、平成12規制に関しては、各メーカーとも相応の排ガス技術を持ち、その気になれば規制値の達成も可能な状況だった。しかし、これらのモデルはいずれも少数生産で、車種別に生じる排ガス対応コストを販売益から補填することが見越せず、また、モデルライフが寿命を迎えていたことなどから、対応しても採算が見込めないモデルとして生産の中止が決定した。
ちなみに、この規制が実施される平成12年(2000年)ごろの市場動向は、ファミリカーとしてミニバンが普及の度を深め、スポーツタイプのモデルがあまり売れない時代背景だった。それだけに、メーカーが在来の高性能スポーツモデルの生産・販売中止を決定したのも当然の成り行きだった。
実際、その後の流れは、日産GT-R、トヨタ・スープラやGRシリーズ、マツダのSKYACTIV技術を投入した一連のモデルを見れば、昭和53年規制から有害物質の排出を70%にまで削減した平成12年規制値も難なくクリアして現在にいたっていることがよく分かる。
こうした歴史的な流れを見ると、まったくの私見であり技術的な根拠もまったくないが、特殊な排気ガスのリサーキュレーションシステムが考案され、化石燃料を使う内燃機関でも二酸化炭素の排出を激減させることができるのではないか、と淡い希望を抱いてしまう。ガソリン機関を使う自動車の走りには、EVにはない、なんともいえない魅力が溢れているのだから……。