それはレクサスのスピリットが宿る海上のファーストクラス
スイミングプラットフォームから乗り込む。シートイガレージ両脇から4ステップでアフトデッキに至る。後端にテーブルを挟むデザイン化されたコの字ソファが置かれる。左舷にはBBQグリルとウエットバー、製氷機、冷蔵庫のキャビネット。左舷と右舷のキャビンCピラー下部にはジョイスティックが離接岸のサポートヘルムとして隠されている。
アフトデッキはもちろんのことオープンエリアはチークが貼り巡らされる。右舷のフライブリッジ(二階デッキ部分)ラダーの下部が電動で開き、床下クルールームへのエントランスが潜む。
スライドドアを開けメインサロンへ。明るく艶やかな空間が広がる。レイアウトは前方にヘルムとサロン、後方にギャレーの最新トレンド。ブラウントーンのウッディなファニチャーが出迎える。左舷はカウンターを跳ね上げるとコンロやシンクが現れ、レンジやワイングラスキャビネットも用意されるオープンキッチン。右舷には大型冷蔵庫がファニチャーとして溶けこんでいる。ウッディな設え、そのパネル素材はユーカリの木だ。
その先にサロンとヘルムステーションが広がる。左舷にはテーブルと真っ白なL字ソファ、対面する右舷にはI字ソファ。アッシュなフロアもウッドモード仕上げ。フロアにはLEXUSのLをモチーフのオーナメント、テーブルの支柱にもLが潜んでいる。ゆったりとしたサロン、オレンジのアンビエントライト、なんともリキュスな世界が広がる。
右舷前方にメインヘルム(主操船席)、2脚の革製シートの前にはカーボン製コンソールにGARMINの17インチマルチディスプレイが3面並び、革巻きホワイトのステアリングホイール右にIPSコントローラ―とジョイスティックが位置する。ヘルム(操船席)右のサイドパネルのステッチやしぼ、細やかな配慮。もちろんヘルムからの視界は極めて良好だ。
ヘルム背後には49インチのTVモニター、ブルーレイプレーヤが潜み、Mark Levinsonの豊かなサウンドとともにAV環境を仕上げている。さらにはボートコネクティッド技術「LY-Link」を搭載しエマージェンシーにもスマホ対応を可能にしてくれる。左舷にはパンタグラフ式サイドドアがありキャットウエイへのイージーアクセスが可能。バウデッキにはサンタンベッドにソファ&テーブルのオープンテラスラウンジが展開している。
コンパニオンウエイのステップを降りて3ステートルームを持つロアデッキへ。踊り場にはコーヒーメーカーとワインクーラー、降りたミジップのオーナーズスイートのドア脇にウオッシュ&ドライが用意され、ロングクル―ジングのスタンバイに抜かりはない。
ビーム(船体幅)いっぱいに広がるオーナーズスイート、両舷に広がるシービューウインドウからの豊かな採光、ユーカリのウッドウオール、コクーンのようなキングサイズベッド、ふくよかなラウンジソファ。シートの縫製、家具の仕上げ、熟練した職人のクラフトマンシップがほとばしる。バウには専用のパウダールームを持つVIPルーム、デザインホテルのアートフルなステートルームのあでやかさで展開する。
少し妖しい。ツインベッドのゲストルームにも専用のパウダールーム(トイレ&シャワー、洗面所)が用意される。カーボン素材のTトップを持つオープンゾーンのフライブリッジはL字ソファにテーブル、ウエットバー&冷蔵庫、右舷前方にサンタンベッド、左舷にキャプテンシートは1脚のみのアッパーヘルムとコンパクトにまとめられている。アッパーヘルムの装備はメインヘルムと同様カーボンのコンソールに3面のGARMINマルチモニター、ステアリングホイール左にIPSコントローラ―、ジョイスティックレバーがセットされる。
初冬の淡いブルーの空、西から天気は崩れる予報。北風6m、気温16度。昼下がりの横浜ベイサイドマリーナ。
全長19.94m全幅5.76m。暖機を終え、フライブリッジのヘルムで係留バースを離岸する。VOLVO Penta IPS1350-1000馬力エンジン×2基はデジタルレブカウンターの指針で稼働確認するほど静寂だ。600rpm6ノット燃費11L/hでマリーナ内を抜け八景沖へ。1000rpm10ノット、1250rpm12ノット。ピッチの長いうねりと重なる東京湾特有のチョッピーな波がある。スロットルを入れていく。確実な駆動が伝わっていく。フラップはAUTO、柔らかい加速がシームレスに続きプレーニングしていく。ヘディングは観音崎。
1500rpm14ノット燃費144L/h。1800rpm21ノット。直進性の良さを感じている。2000rpm25ノット燃費254L/h。フェアウエイライドでソフトな乗り心地に満たされている。まるでクルマ感覚のステアリングを切りこんでいく、軽いインサイドバンクを伴いながら回頭が始まる。ARGジャイロスタビライザーを搭載するが回頭の邪魔をすることもなくリニアな動きでイメージどおりのトレースを続けていく。うねりのあるはぐれ波に突っ込んでみる。遠くで波を切り叩き落すがスプレーは上がらない。スラロームを試みる。スムースな切り返し、しなやかな動き。トランサムデッドライズ(後部船底傾斜角度)17度、ニュートラルでスポーティなマニューバビリティが痛快感を伴ってくる。ライトウエイトな軽快感に満たされていく。
船底の構造材はCFRPカーボン繊維強化プラスティック、ハルはGFRPバキュームインフュージョン、軽く強靭なハルが安定した走行性能を保証している。2200rpm30ノット、小気味よい加速が続く。スロットルを全開にする。2400rpm34ノット燃費325L/h、MAX2440rpm35.1ノット。向かい風5m、5名乗船。堂々たる成果だ。
フライブリッジでの操船はLC500コンバーチブルでオープンエアドライビングする感覚にクロスオーバーする。スポーティでエレガント。至福のオープンエアクルージングに酔いしれる。このまま東京セブンアイランド、伊豆七島をアイランドホッピングするクルージングに出かけたくなる。黒潮カレントをもビロードの海に変えるLEXUSライドの魔法にはまり込む。
下船し、ふと振り返る。西日を受けたLY650のシルエットが浮かびあがり燦然と輝いて見えた。孤高な気高さが麗しい。