この記事をまとめると
■ポルシェのやっちまったモデルを探したがポルシェに失敗作はない
■ポルシェのFR/MRモデルは911派から嫌われただけでクルマとしては失敗とは言えない
■失敗作がないことが、ポルシェファンがこのブランドに魅了される理由だ
ポルシェの失敗作を見つけることができない
不肖ヤマザキ、ずっと考えている。時間にしてもう半日くらい。いろいろなポルシェの画像をPCに映し出しながら、とにかく考えている。でもいくら考えても答えというものが出てこないのですよ、今回は。だって今回のお題は「やっちまったな、ポルシェ」。つまりポルシェの失敗作を改めて紹介してみろというものなのだから。ポルシェにだって失敗作はあるはずだ。それを探せと編集部は言う。
あえてその候補を探すとしたら、伝統の911ファン、つまりリヤエンジン信奉者からは、ほとんどの場合まったく支持されることのなかったフロントエンジンの924、944、968、928や、さらにさかのぼってミッドシップの914ということになるのだろうか。しかし、それはあくまでも「ポルシェといえば絶対に911」派から嫌われただけの話で、クルマとしては決して失敗作といえるものではない。
たとえば1969年から生産が開始されたミッドシップの914。そのスタイルは時に酷評されることもあったけれど、水平対向4気筒エンジンがVWビートルのリヤからミッドに移動したことで、その運動性能は圧倒的に向上した。
この914には、のちにポルシェ911Tの2リッター水平対向6気筒エンジンを搭載する914/6なども誕生し、リヤにトレーリングアーム方式を採用したサスペンションなどとともに、ミッドシップスポーツとしての走りを大いに満喫させてくれたのだ。これを「やっちまった」と誰が言えようか。
1975年に誕生した924から944を経て968へと続く、4気筒FR車も、911信奉者には「やっちまった」の一言で片づけられることが多いモデルだ。ときに4気筒などポルシェではないと揶揄され、またエンジンはリヤにあるのがもっとも正しい基本設計なのだと持論を展開される中で、肩身の狭い思いを続けてきた4気筒FR。
たしかにその価格は911に対してはリーズナブルだったが、それはいまあらためて見ても「安かろう、悪かろう」の作りではない。それはむしろポルシェのクルマ作りの哲学を確実に継承した、新たなクラスのプロダクトにほかならなかったのだ。もちろんカスタマーはそれに、ネガティブな印象を持つことはなかっただろう(故障時などは別の話として)。
実際には、VWやアウディなどの部品を流用してコストダウンを図り、エンジンもアウディ100用の直列4気筒を2リッターにボアアップ、同時にSOHC化したものだった。最高出力はヨーロッパ仕様で125馬力。さらに、1978年には高性能版の924ターボが170馬力で、また1986年には155馬力仕様の2.5リッター自然吸気の924Sが発売され、いずれも順調な販売を記録した。