クルマ好きなら誰でも惚れる女性!? ロールス・ロイスの先端にいるのは誰? (2/2ページ)

パリのコンテストでグランプリを受賞

 ただしそのモデルについては諸説あり、1913年にサイクスが彫った新作「ウィスパー」のモデルがその秘書の女性で、「スピリット・オブ・エクスタシー」には実在する女性のモデルはいないという証言も出てきています。どちらにしても、エレノアさんはとても魅力的な女性だったのでしょうね。

 その後、1911年から「スピリット・オブ・エクスタシー」は正式にロールス・ロイスのフード・マスコットとなりました。1920年には、パリで開催されたフード・マスコット・コンテストでグランプリを受賞しています。国際的にも、この芸術的価値が認められたということですね。

 ただ、ロールス・ロイスのオーナーの中にはこの「スピリット・オブ・エクスタシー」ではなく、自身の好みのフード・マスコットを装着する人もいたそうで、国王(女王)の公用車も公式行事の際には英国の守護聖人であるセント・ジョージが馬に乗り、槍をかざしてドラゴンに立ち向かうという、専用デザインのマスコットが装着されることになっています。現在、女王の公用車はベントレーとなっているようですが、それでもセント・ジョージのマスコットに変える習慣は続いています。

 また噂の域を出ませんが、この「スピリット・オブ・エクスタシー」は半身がほぼヌードだったため、女性が人前で肌を露出することが宗教的に許されていない、とあるアラブの貴族からクレームが入ったことがあったとか。そのため1934年に彫刻家サイクスが新たにデザインしたのが、衣服を着てひざまづいている女性像「ニーリング」だと言われています。

 そしてこちらのモデルはおそらく、エレノアさんではないでしょう。というのは、第一次大戦中の1915年、モンタギューと一緒に客船に乗船して地中海を航海中に、ドイツ軍が発射した魚雷によってその客船は沈没。奇跡的にモンタギューは助かったのですが、エレノアさんは二度と帰ることはなかったといいます。いったいその後、モンタギューはどんな想いでフード・マスコットを眺めていたのでしょうか………。

 現在もロールス・ロイスのボンネットで優美に輝く、「スピリット・オブ・エクスタシー」にまつわるエピソードの数々。見かけるたびに、胸に熱いものが宿りそうな気がしませんか。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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