【試乗】トヨタの電気自動車bZ4Xは期待以上のデキ! ガソリン車ユーザーを納得させる「ネガ潰し」がスゴイ (2/2ページ)

SUVだが低重心で気持ちのいいコーナリング

 操縦性は、BEVらしいものだ。クルマにとって最大の重量物であるバッテリーを床下に低く薄く搭載することで、エンジン車では困難な低重心化を実現している。同時に、前後重量配分も理想に近い。よって、コーナリングマナーは自然であり、旋回中のロールも驚くほど少ない。走りは気持ちいいのである。

 とくに、前後輪を駆動させる4WDは、旋回中の駆動力をフロントタイヤだけに頼っていないことで、なおかつ旋回性が自然である。235/50R20インチ仕様は、235/60R18インチ仕様に比較してフットワークの軽快さは際立っていた。

 それにしても気になるのは、ドライビングポジションである。運転姿勢はフラットライドで、ペダルを上から踏みつけるような姿勢にならずに好感が持てる。だが、メーターは前方に移植されており、ステアリングの間から計器類を確認するのではなく、ハンドルの上から目視するデザインに変更。だが、ステアリングが邪魔をして、認識に苦労したのも事実。

 もっともこれには事情があるようだ。昨年のプロトタイプ発表であったように、近い将来にステアリングバイワイアーが設定される予定だ。この認可が取得されたあかつきには、ステアリングはレーシングカーのように、あるいは航空機の操縦艦のような上端が欠けた仕様になる。それならばメーターは見やすくなる。ステアバイワイアーありきのデザインのように思えた。

 それにしてもbZ4Xは、満を持して発表されただけに、細部に先進的な熟成の痕跡がうかがえる。たとえばバッテリーの劣化は、約10年で10%と試算されている。初期プリウスでは50%近く性能が低下した。それが低いリセールバリューの原因になっていた。劣化の克服は買い替え時にはありがたい。

 バッテリーは水冷式であり厳格に温度管理されている。それにより劣化が抑えらせれるだけでなく、充放電の性能が高い。短時間の急速充電が可能になった。定格出力150kWの急速充電も可能になった。

 BEVの課題のひとつである暖房機能にも対策が盛り込まれている。極端な電気消耗の原因になっているヒーターも、極力使用しなくても済むようにステアリングヒーターやシートヒーターが標準設定されている。それはリヤシートにまで及んでいるばかりか、車内全体を温めるのではなく、パッセンジャーだけを包み込むように保温するという。電力の節約は徹底しているのである。

 そういつた一連の作り込みから想像できるのは、あからさまなBEV感を強調するのではなく、むしろ抑えることで内燃機関からの移行をしやすくしている姿勢である。

 暖房の件、バッテリー劣化の件、加速フィール、操縦性……。すべてが「自然」をキーワードに開発されているのである。プロトタイプゆえにまだまだ熟成が甘い点がある。だが、そんなネガが払拭されたのちには、後発だったからこその熟成期間がメリットになる。理想的なBEVが完成するのだろうと期待する。


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