ステップワゴンの復権なるか! 高評価しか聞こえてこない「新型ノア・ヴォク」に対する優位性を探った (2/2ページ)

キャプテンシートのアレンジが進化!

 その決定的なポイントが、2列目キャプテンシートのアレンジ。先代はノア&ヴォクシー、セレナができた、左右スライドによる、キャプテンからセミベンチシートへのアレンジが、唯一できなかったのだ。子育て世代が、よりリッチな居住感覚が得られる2列目キャプテンシートを選んでしまうと、ベンチシートのほうがやりやすいおむつ替えなどで苦労することになったのである。が、新型ではついに、遅ればせながら2列目キャプテンシートに左右スライド機構を用意。2列目席キャプテンシートを選択しても、ベンチシート化できるようになった点は、使い勝手の上で大きな進化であり、ノア&ヴォクシーやセレナと変わらない実用性を身につけたことになる。

 ちなみに、2列目キャプテンシートのロングスライド機能も向上。通常位置で610mm、2座のキャプテンシートを中寄せすると865mmもの超ロングスライドが可能になる。ここでのポイントは、今あるMクラスボックス型ミニバンの中で、唯一、ステップワゴンの3列目席が床下格納式になっていること。ラゲッジルームに床下収納が付けられないデメリットがある一方、3列目席をよりスッキリ格納でき、左右跳ね上げ式のノア&ヴォクシーやセレナと違い、リヤクォーターウインドウを格納した3列目席で塞がずに済む大きなメリットがある。

 それを利用して、2列目キャプテンシートをロングスライドさせれば、贅沢かつ足もとが広大すぎる4座のボックス型リムジンに変身させられるのである。新型ノア&ヴォクシーやセレナでも同じようなシートアレンジは可能だが、格納した3列目席が視界に入るか、入らないかとスッキリ度は大違いのはずである。

 もっとも、新型ノア&ヴォクシーは、2座のキャプテンシートを中寄せスライドすることなく、折りたたみ式テーブル(S-Zグレードはカップホルダー×4、USBソケット×2を完備!!)が使える状態で、ストレート超ロングスライドを実現してしまったのだから、これまたステップワゴンがこのシートアレンジが優勢とは言いづらくなってしまったのも事実。

 筆者はすでに新型ノア&ヴォクシーのハイブリッド、ガソリン車に試乗しているが、先代ノア&ヴォクシーとステップワゴン比較では、走行性能においてはステップワゴンがややリードという印象であったものの、新型ノア&ヴォクシーはモーター、バッテリーともにパワーアップした最新の第五世代ハイブリッドシステムをトヨタ車として先行搭載。初代ノア&ヴォクシーからおよそ21年ぶりに!? 刷新されたTNGA、GA-Cプラットフォームの採用もあり、走行性能や乗り心地、静粛性がレベルアップされているのを確認済みだ。が、ミニバンでも走りにこだわりまくるホンダのことだから、先代でもクラストップレベルだった走行性能は、新型でかなりのレベルアップが期待、予想される。

 今、ミニバンの売れ行きのひとつのポイントが「顔つき」とされていたりするが、プレーンな新型ステップワゴンと、ノア&ヴォクシーともに迫力満点、ヴォクシーのギラギラ顔のどちらが受け入れられるのかは、コロナ禍で激変した社会では、まったく予想がつかない……というのも個人的な感想である。

 とはいえ、ステップワゴン復活の鍵が、デザイン性と走行性能に大きくかかわってくることは間違いなく、それは新型ステップワゴンに試乗してからでないと、わかり得ないのは当然だ。現時点において、新型ノア&ヴォクシーの、とくに先進運転支援機能と先進&便利装備を筆頭とした商品力は極めて高いと言わざるを得ないが、それに新型ステップワゴンがどう対抗していくのか。フタを開けてびっくり……そんな新型ステップワゴンの躍進、復活に大いに期待したいところだ。ノア&ヴォクシーの独り勝ちでは、つまらないではないか。

 なお、ガソリン車の2WD同士の価格は、新型ノアの実質的基本グレード、G、7人乗り、2リッターエンジン、170馬力、20.6kg-mモデルが297万円。対する新型ステップワゴンのベースグレード、エアーの7人乗り、1.5リッターターボエンジンモデルのスペックは未公表だが(現行型は150馬力、20.7kg-m)、299.86万円だ。また、ハイブリッドモデルは新型ノアのGで332万円、新型ステップワゴンはエアーで338.25万円。ステップワゴンの装備、機能がまだ判明していないため、断定的なことは言えないが、ステップワゴンのほうがやや高めの価格設定のようにも見える。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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