この記事をまとめると
■スーパーGTでは性能調整システム(BOP)を採用して車両の性能を制限している
■BOPはFIA-GT3規定モデルを採用する多くのレースで採用されている
■BOPによってレースは混戦が演出されることになり最終戦まで熾烈なバトルが展開される
スーパーGTではレースを面白くするためにBOPを採用
以前、アウディR8のオーナーから、こんな質問を受けたことがある。
「スーパーGTのGT300クラスでは、なぜアウディR8がトヨタ・プリウスやスバルBRZ、トヨタ86に負けるのか? 市販モデルでは絶対に考えられないでしょ?」
おそらく、ニッサンGT-RやホンダNSX、ポルシェ911に乗っている人たちのなかにも、同じ気持ちでGT300クラスを苦々しく思っているオーナーがいるのではないだろうか?
確かに市販モデルの性能だけを考えてみれば、トヨタ・プリウスやスバルBRZ、トヨタ86は大排気量エンジンを搭載するスーパーカーを相手に勝つことは難しいかもしれないが、スーパーGTのGT300クラスに参戦するトヨタ・プリウスやスバルBRZ、トヨタ86は専用設計の純レーシングカーだ。
これに加えて、スーパーGTでは独自の性能調整システム、BOPを採用。このBOPが市販モデルでは考えられないような”下克上”を生み出しており、スーパーGTのGT300クラスならではの混戦を演出している。
ちなみに、BOP自体はFIA-GT3規定モデルを採用する多くのレースで採用されており、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパやインターコンチネンタルGTチャレンジでも性能調整が導入されている。事前のテストやレースのリザルトに応じて、最低重量や最低地上高、リストリクター系を設定しているが、FIA-GT3車両だけで争われるシリーズにおいても、「今年はポルシェ911では勝てない」とか「今年はアウディR8が有利」など不平不満の声は少なくない。
ましてやスーパーGTのGT300クラスはFIA-GT3に加えて、日本独自のGT300(旧JAF-GT300)およびGT300マザーシャーシ(旧JAF-GT300マザーシャーシ)も出場しているだけに、独自の性能調整が必要で、そうなれば必然的にある程度の”ゆがみ”が生じてくることだろう。
加えて、FIA-GT3を採用する多くのシリーズが指定タイヤのワンメイクコントロールが採用されているが、スーパーGTではGT500クラス、GT300クラスともに複数メーカーでタイヤの開発競争が行われていることも、この”ゆがみ”を助長させるひとつの要因となっているようだ。