エンジンは7リッターまで拡大しクーペ版はレースでも活躍
生産型のACコブラのスタイルは、ほぼACエースそのもののディテールで、素材は軽量なアルミニウム製。シャシーは強靭な2本のサイドメンバーとしたラダーフレームで、その前後にはサブフレームが組み合わされている。サスペンションは4輪とも横置きリーフスプリングにロワAアームを組み合わせた独立懸架方式となる。
搭載エンジンは生産型では260立方インチからスタートしたが、100台を生産した段階で289立方インチ(4.7リッター)に変更。さらに、1965年にはビッグブロックの427立方インチ(7リッター)も加わった。
ちなみに289立方インチ版エンジンの最高出力は、当時のデータによれば271馬力。車重は918kgにすぎず、それが可能とする最高速は150マイル(241km/h)、スタートから100マイルまでの加速を10.8秒でこなす、当時としては世界最速レベルの運動性能が実現されていた。
シェルビーは当然のことながら、このACコブラ289をモータースポーツへと参戦させるが、残念ながらその結果は期待に応えられるものではなかった。
1962年、1963年と満足な結果を得られなかったシェルビーは、フォードから提供された潤沢な資金をもとに、コブラのクーペ・バージョンたる「シェルビー・コブラ・デイトナ・クーペ」を開発。それは、新鋭デザイナーのピート・ブロックによってデザインされた空力特性に富むボディと、当初は275馬力だったものの最終的には380馬力にまでスペックを向上させたとされる280立方インチ・エンジンなどのチューニングによって、最高速は320km/hを可能とした究極のコブラだった。
その戦績は1964年のセブリング24時間で、プロトタイプクラスのフェラーリが1〜3位を独占したのに続いて、デイトナ・クーペはGTクラスで1〜3位を獲得したことに始まり、とても魅力的なものだった。ニュルブルクリンク1000kmレースでのクラス優勝なども、忘れてはならない戦績だ。
シェルビーACコブラの生産台数は、1962年の260から1967年の427までトータルで約1400台。
現在でもさまざまなメーカーで、コンティニュエ―ション・カー(後継車)の名のもとに、レプリカモデルが数多く生産、販売されていることを考えると、その人気の高さというものはいまさらながらに良くわかる。