7台が生産されそのうちの1台が昭和天皇記念館に展示中
そんな国産御料車の開発を担当していたプリンス自動車は、御料車を発表せず1966年8月に日産自動車と合併することになる。そして、1966年10月に国産御料車として「日産プリンスロイヤル」が発表され、翌1967年から生産がはじまった。
車両型式S390P-1型、プリンスロイヤルのボディはエンジン同様に桁外れのスケールで、全長6155mm・全幅2100mm・全高1770mm、ホイールベースは3880mm、車両重量は3200kgとなっていた。基本設計は当時の常識的なものである箱型断面のラダーフレームで、巨大なボディはフレームに載せられた構造となっている。当然ながら駆動方式はFRだ。
これだけ大きなボディは後席の快適性を実現するためであり、重量増は防弾ガラスなど安全性を確保するため。また、冗長性を確保するために、ブレーキと燃料系はそれぞれ二重系統式とされていた。なお、補助席を含めた乗車定員は8名になっていたという。
プリンスロイヤルは、合計7台が生産され、宮内庁には5台が納入されたと言われている。まさに御料車のためだけに生み出されたクルマであり、このエンジンがほかに使われなかったのは残念に感じる部分もあるが、天皇陛下のために開発したエンジンを他車に流用するなどという商品企画は礼を失した行為であり、微塵も考えられなかったのだろう。
1967年から2007年まで御料車として活躍したというプリンスロイヤルは、はたして現存しているのか。そもそも中古車として流通するということもありえないので、一般人が持っているはずはない。製造元である日産は所蔵しているという話だが、座間の日産ヘリテージコレクションでは公開していないようだ。
もはや一般人が見ることができない幻の史上最大排気量の国産乗用車……と思いきや、意外にも東京都立川市にある国営昭和記念公園内、昭和天皇記念館にプリンスロイヤルが展示されているのだった。
国産初の御料車という強い思いで生み出されたプリンスロイヤルは、クルマ好きであれば、一度は本物を目にしておきたいモデルであることは間違いない。昭和記念公園には有料駐車場も用意されているので、ドライブがてら訪れてみてはいかがだろうか。