この記事をまとめると
■国産初の御料車としてプリンスが開発した日産プリンスロイヤル
■ラダーフレームの8人乗りリムジンで6373ccのV8を搭載
■東京都立川市の昭和天皇記念館に現在も展示中
6リッター超のV8を搭載した高貴な日本車が存在した
国産乗用車において最大排気量エンジンを積んだモデルをご存知だろうか。
先代のトヨタ・センチュリーが積んだ国産唯一のV12エンジン「1GZ-FE」の総排気量は4996ccだったし、最新のレクサスが積むV8エンジン「2UR」系の総排気量は4968ccだ。ひと世代前のレクサスLXには5662ccのV8エンジン「3UR-FE」が積まれていた……。パッと思い浮かぶのは、このあたりだろうが、国産乗用車史上最大排気量のエンジンを積んだモデルは1966年に発表されたモデルだった。
それが「日産プリンスロイヤル」だ。
プリンス(王子/皇太子)とロイヤル(王室の、皇族の)という、高貴な名前を持つ、このモデルはまさしく天皇陛下が乗るための「御料車」として作られた特別な国産車だった。
海外では王室、日本では天皇家が乗るような特別なクルマは、その国における最高峰と位置づけられている。モータリゼーションが生まれた国であり、王室も存在するイギリスにはロールスロイスという、そうしたクルマを作る専業ブランドがあり、自動車を生み出した国とされるドイツにもメルセデス・ベンツが存在している。ロイヤルファミリーとは無縁だが、アメリカにはキャデラックというプレミアムブランドがある。
じつは戦後の日本でも天皇家の御料車には、こうした輸入車が選ばれていた。しかし、高度成長期に入り、自動車メーカーが力をつけていくなかで、「自動車の最高峰である御料車を国産車にする」という機運が高まる。これは単独メーカーでの思いではなくオールジャパン的な動きだった。その中で開発の中心となったのが、プリンス自動車だった。ご存じのようにスカイラインやグロリアを生み出したメーカーだ。
とにかく国産の御料車にこだわり、その部品のすべてを国産にするという意気込みだったというが、最終的にトランスミッションだけは対応できず、GM製の3速ATが採用されたが、それ以外はほぼ国産品でまかなわれた。それは総排気量6373ccという国産史上最大排気量のV8エンジンも同様だった。