この記事をまとめると
■近年は絶好調で販売台数を伸ばすフェラーリだがかつては暗黒時代もあった
■1979年代から1980年代にかけて登場したフェラーリには「やっちまった」モデルが多い
■現在のフェラーリは世界最高水準のブランド力によりほとんどのモデルが成功している
1970〜1980年代はフェラーリ暗黒時代だった
いまや「飛ぶ鳥を落とす勢い」と例えてもよいフェラーリ。一般的なカタログモデルを購入するだけでも、そこにあるのは長いオーダーリストの列。さらに、フェラーリには絶対的なカスタマーのヒエラルキーがある(らしい)から、彼らがこの列に割り込むことで、一般ユーザーの納車時期はますます伸びる。一時はオーダーから納車まで、1年半ほどの時間を必要とすると説明されたモデルさえあった。
そのフェラーリにも、暗黒時代というものがあった。とりわけ1970年代から1980年代にかけての、オイルショックを直接の発端とする経済危機。加えて年々厳しくなる排出ガス規制に、フェラーリのようなスーパーカーメーカーは直面することになったから、彼らが最大の魅力とする最高出力や最高速といったデータは、徐々にその牙を抜かれていったのだ。しかもそのようななかでフェラーリが命運をかけたのは、実用性の高いミッドシップの2+2GT。だが、残念ながら12気筒モデルも、よりコンパクトな8気筒モデルも、十分な成功を収めたとはいえない、いわゆる「やっちまったな」フェラーリが続々と誕生するのみだった。
その「やっちまったな」の始まりは、1973年にデビューした「ディーノ208/308GT4」だったのかもしれない。ディーノといえばその前作である246GT/GTSの美しさがいまでも鮮烈な記憶として残るが、同じくランボルギーニ版「やっちまったな」モデルのひとつともいえるあのウラッコにも似たこのモデルは、残念ながら大きなヒットには至らなかった。
フェラーリとしては初となる3リッターのV型8気筒エンジンをミッドシップし、デザインをベルトーネのマルッチェロ・ガンディーニに委ねた208/308GT4。
ちなみに208GT/4は、税制上の問題でイタリア市場専用車として製作されたモデル。それを加えても全生産台数は約7年間の期間で2826台にとどまっている。これには1975年にデビューした2シーター・ベルリネッタ、308GTBの人気に隠れてしまったという理由もあるだろう。