【試乗】新型アウトランダーPHEVは雪山でも最強の走り! 3列シートで電子レンジも使えて「欲しくない理由」が見つからない (2/2ページ)

未舗装・不整地な場所ほどアウトランダーPHEVは真価を発揮する

 さて、ウインタースポーツのなかでもとくに近年人気があるのは、バックカントリーと呼ばれる、整備されたゲレンデではなく、ブッシュのあるような野生感覚のあふれる専用のスキーコースにチャレンジすること。そういった場所では、駐車場の設備や除雪の行き届いた道路環境は決して整えられているわけでもなく、かなり雪の降り積もった奥深いなかにもクルマで入って行くような必要性が生じるだろう。

 新型アウトランダーPHEVはドライブモードのなかのスノーモードを選べば、そうした深雪でタイヤがグリップしづらいような場面においても緻密な四輪制御が可能となり、タイヤを空転させることなくスムースに雪をかき分けて目的地にたどり着くことが可能だ。

 そしてもうひとつ新型アウトランダーPHEVの魅力としては、1500Wの給電設備も備えているということ。こうしたバックカントリースキーを楽しむような地域では、レストハウスなどのレストランや設備が充分完備されているとはいえず、スキーヤーが休むときは自らそうした場所や物を準備しておく必要がある。

 新型アウトランダーPHEVはここで本来持つ「PHEV」の最大のメリットを発揮してくれた。それは電気ケトルで水を沸かし、電子レンジで食べ物を温め、コーヒーもカップ麺もその場で作って自然の景色を満喫しながら、体を温め休めることができること。

 本来であれば高価なお金を払って設備の良いレストハウスまで足を運ばなければできない贅沢が、新型アウトランダーPHEVはリヤゲートを開けてそこに腰かけ、自然を眺めながら最高の特等席とすることができるのだ。

 また、二列目シートが3分割となっており、中央の肘掛部分を前倒しするとスキーのような長尺の荷物もすんなりと収めることが可能だ。今回はひとりでスキー1セットを積み込み、バックカントリースキー場まで出かけたが、さらに2セット3セットと積み込み、4人乗車して楽しむことだってできるだろう。

 また、後席にも独立した左右のシートヒーターが備わり、目隠し用のサンシェードなどもあって車内での着替えもしやすい。エアコンは前席左右の独立クライメイトのほか、後席にも専用の温度設定スイッチが備わり、全席が快適に保たれる。

 さらに、今回の試乗車は3列シート仕様ということで、3列目のシートにも搭乗してみたが、さすがにここは天井が低く足もとのスペースも充分とはいえない。小さな子供用として、またはエマージェンシーの仕様と考えれば十分で、雪道を走るだけのクルマとしてでなく、年を通して冠婚葬祭や盆暮れ正月など家族同士で移動する際にも役に立つ、一台二役三役の魅力がもたらされていて、これは長年のアウトランダーPHEVユーザーからの要望に応えたものであるという。

 こうして電気製品を使用してもメインバッテリーは相当強力で、それで電力を大幅に消費することがない。だが、帰路においては市街地へ戻った時にEV走行が可能なように、高速道路のサービスエリアやショッピングセンターなどに設置された充電設備で充電しておくこともひとつのアイディアとして有効だ。

 また、新型アウトランダーPHEVには引き続きチャージモードといわれるスイッチが備わっていて、帰路高速道路を走りながらチャージモードを選択していれば、都内に帰るころにはバッテリーが満充電となり、都内をEV走行で自宅まで帰ることが可能だ。もっとも、標高の高い山から降りる際には回生ブレーキを多様し相当なエネルギーを回生できるので、バッテリーモニターは半分以上に充電残量が回復していることを示していた。

 今回の出発から山岳地、雪道、そして帰路に至るまで一貫して感じたのは、新型アウトランダーPHEVの静粛性の高さ、装備の豪華さ、デザインの秀逸さ、そして走りの良さだ。

「SUVでも走りは諦めない」という三菱のエンジニアの熱い魂が新型アウトランダーPHEVには宿っていて、圧雪状態のクローズドエリアでドリフト走行も試したが、自在に姿勢を操れるスポーツ性の高さはまさにランエボを彷彿とさせるものだった。こうして実際に走りの良さを様々な場面で確かめることで、ますます評価は高まり、そして気持ちも惹かれていくことに気が付くだろう。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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