クルマは所有からシェアリングへ
再生可能エネルギーとEVの相性がいいことは知られており、運用されていないEVを地域のバッファとして活用するというビークル・トゥ・グリッド、太陽光発電などの電力をEVに貯めておいて家庭で使うビークル・トゥ・ホームといったアイディアもどんどん実現している。
それでも、再生可能エネルギーによる発電というのは基本的には不安定なものだ。すべてのクルマがEVになって、なおかつカーボンニュートラルな発電方法だけになった世界では、停電が日常茶飯事といったことになるかもしれない。
そうはならないという予測もある。前述した自工会の予測は、現在と同じだけの保有車両が同じように走行するという前提であって、自動車の利用が減れば当然ながら消費電力も減ってくる。
そうした可能性の前提として、クルマが所有からシェアリングに変わるというトレンドも考慮しなければならないだろう。
これから技術的に改善されるだろうが、EVにはバッテリー劣化という課題がある。EVを所有するというのは劣化するバッテリーに大金を払うようなものである。車両ごとのシェアリングになるのか、バッテリーだけシェアリングするモデルが誕生するのか、さまざまな可能性があり得るが、いずれにしても全車EVという時代には、クルマは持つものでなく、必要なときに使うものとなるだろう。
もちろん、これは都市部に限った話で、人口の少ないエリアでシェアリングビジネスが成立しづらいために、相変わらず所有という選択が主流であり続ける可能性も否定できないが……。
ともかくモータリゼーションそのものがEVの普及によって大きく変わるのは間違いない。自動車業界100年に一度の大変革期というのは、けっして大袈裟な表現ではないのである。
最後に触れておきたいのが、自動車諸税の行方だ。いわゆるガソリン税が実質的に消滅し、自動車税などの税収も減るであろう未来の課題は道路インフラの整備となる。
マイカーが減って、シェアリングが主流になると、ますます宅配ビジネスは盛んになると考えられ、そうなるとロジスティクスの観点から道路整備はいまよりも重要になる。自動車諸税が減っていく中で、どのように道路整備をするための予算を確保するのかは大きな問題となるだろう。結果的には、ロジスティクスの恩恵を受けるのはすべての国民という建前で、消費税のような広く課税できる部分で増税が行なわれることは確実だ。