1000馬力オーバーのマシンによる超ハイレベルバトル
EVでニュルブルクリンクでの最速を目指す挑戦はすでに他社によって行われてきた。中国のNIOは、2018年に6分45秒25の最速記録を樹立しており、そのオンボード映像は迫力満点だ。1989年に日産スカイラインR32型GT-Rが誕生し、その当時の周回時間は8分20秒ほど。それでも十分に凄いのだが、7分を切る周回タイムを記録したことで、EVがどれほど速くニュルブルクリンクを走れるかということが確認できる。
その後、フォルクスワーゲン(VW)のID.Rが、EVの最速記録を6分5秒に縮めている。これらはいずれも、STI E-RAのようなプロトタイプスポーツカーの姿をしているが、市販量産EVである米国テスラのモデルSやドイツのポルシェ・タイカンでも、7分30~40秒での周回を果たしている。
エンジン市販車のポルシェGT2 RSが、6分38秒で走っており、また、同じくポルシェの919ハイブリッドEVOというレーシングカーは5分19秒だ。エンジン車のほうがより速いとはいえ、1周6~7分での走行は、とてつもない速さといって過言ではない。
スバルは、これまで水平対向エンジンと4輪駆動の技術を活かし、低重心とシンメトリカル4WDを操縦安定性の高さの技術的裏付けとしてきた。これがEVとなれば、そもそもバッテリーを床下に積むことで低重心になり、前輪と後輪の間にバッテリーを積むことで前後重量配分を適正化できる。なおかつ、モーターは4輪に取り付ければもちろんのこと、前後にひとつずつの2個搭載でも、左右対称というシンメトリカルな4WDが実現できる。
つまり、低重心で左右均等の4WD機構を、EVになればいっそう極めることができることになる。同時に、それはほかの自動車メーカーも、EVになれば同じ条件でクルマづくりができることを意味する。
STI E-RAでのニュルブルクリンク挑戦は、単に周回タイムの達成だけでなく、これまで水平対向エンジンを縦置きで搭載することにより優位性を発揮してきた、低重心とシンメトリカル4WDというスバルの独自性を、EVとなってもいかに他社と差別化できるかが問われる挑戦でもある。