伝家の宝刀「S-AWC」はダートでも極上の走破性を披露
装備系も非常に充実しており、ステアリング全周が温かくなるステアリングヒーターや、全席左右、二列目シート左右にもシートヒーターが備わった。エアコンは左右独立かつ後席専用のエアコンも備え、三系統のエアコンディショニングが可能となっているなど、全席の乗員に快適なキャビンを与えてくれることになった。
後席もまたリクライニングやウインドウのサンシェード、そして足もとの広さなどから非常に快適な空間となっており、むしろ後席を好んで乗りたがる家族層にも喜ばれるだろう。
パワーステアリングは2モーターのラックアンドピニオン式でデリカD:5によって初採用され高評価を得ているものが採用されているが、直進安定性や操作感の軽さ、わだちなどの影響の受けづらさなども含め、非常にステアリング操作感に優れている。
最小回転半径は5.5mと従来の5.6mよりわずか10cmだが小さくなっている。ボディサイズの拡大、ホイールベースの延長などを考えれば、数値以上の実効最小回転半径の小ささに仕上げられている。これはステアリングの最大切れ角が増したことも作用している。
エンジンが始動する場面においても、エンジンの遮音や振動抑制が極めて優れていて静かなまま快適に走れる。このように一般道を普通乗用車として使っても新型アウトランダーPHEVは極めて優れた乗り心地、快適性、燃費、環境性能そして操縦性を提供してくれている。サーキットでの優れたハンドリング性能に加え、一般道でのこの高い完成度を知ったことで評価はさらに高く確立されていくことになるだろう。
今回、オフロードコースでの試乗も叶った。「四輪駆動だからオフロード」というのは安直な発想で、実際に四輪駆動車であっても、ハードなオフロード走行を高度にこなせるクルマはそうそう多くない。しかし、三菱が用意したオフロードコースはぬかるんだ泥濘路の非常にハードな悪路コースだった。しかも比較的ハイスピードの部分も備え、バンプやうねり、タイトターンなどもあって難易度が高い。そんなコースを新型アウトランダーで試すことができた。
タイヤはブリヂストンのエコピアのまま。タイヤは泥でほぼ目詰まりをしていてトレッドパターンが見えないような状態だったが、それでもスタートからアウトランダーPHEVは鋭い加速を示し、まるでラリー車のようにこの悪路の中を突き進んでいく。タイトターンの入り口でブレーキを踏むとABSが介入し、こうした場面ではS-AWCがキャンセルされてしまうのであまり好ましいとはいえないが、逆にワンペダルスイッチを選択して回生ブレーキを強めることで、ブレーキを踏まずにスムースにターンインしていくという走法が推奨できる。
そしてターマックやノーマルといったドライブモードでは、後輪モーターの駆動力配分がやや大きくなり、コーナーではパワースライドをさせることが出来るほどにヨーレートが立ち上がる。タイトターンをカウンターステアを当てながら四輪パワースライドで立ち上がる姿は、とてもこの豪華な高級SUV車とは思えないほどにスポーティでダイナミックな走りだ。さらに、グラベルやマッドといったオフロードに適したモードを選択していくと、よりセンターデフロックに近い制御となり、前後輪のトラクションが確実に引き出され、走行姿勢が安定してくる。
とくにマッドでは、センターデフロックのような前後駆動力が最大限に引き出され、安定しトラクションもよくかかる。だからといって実際に機械的に前後輪が連結されている訳ではないのでターンインの応答性は変化がなくS-AWCの作用で曲がりやすさはそのままだ。
もしタイム計測をすれば、マッドで走ることがもっとも速いといえるだろう。ちなみに電子制御のASCはオンオフが選べ、一般のドライバーが走行する際にはASCはオンのままで走ることが望ましい。また、それを選択してマッドやスノーを選べば、雪道や泥濘路においても姿勢を乱すことなく、ドライバーはただ速度の出し過ぎだけに注意して、あとはステアリングに忠実に走行すれば無事に走破出来てしまう実力の高さだ。
ちなみに最低地上高は200mmが確保されていて、かなりバンプの強いところを乗り越えてもシャシーがヒットするようなことはなかった。また、サスペンションストロークが先代モデル比で約17%も拡大し、ジャンピングスポットなどを高速で飛び超えてもバンプタッチしてサスペンションが底づきすることもなく、室内は非常に快適なまま保たれていた。
外から見ているとダイナミックで乗員が大変そうに見えるのだが、実際にはドライバーも含め乗員はほとんど快適なまま悪路を走り抜けることができていたのである。サーキットも走れ、一般道でも優れていて、なおかつ悪路でもクロカンSUV並みの走破性を示せる完成度の高さが三菱のSUVたる所以であり、新型アウトランダーPHEVも、まさに三菱ならではの抜かりない、そして妥協のないクルマづくりに専念した結果といえるだろう。
今回、一般道と悪路を走り、新型アウトランダーPHVで試すべきポイントは雪道だけとなった。近いうちに雪道でのリポートもお届けしたいと思っている。