【試乗】新型アウトランダーPHEVはアスファルトも悪路も「快適で速い」! 高級感まで増して災害にも強いんじゃ「死角」が見当たらない (1/2ページ)

この記事をまとめると

◼︎中谷明彦が話題のSUV「アウトランダーPHEV」を公道で試乗

◼︎走りもクルマの質感も格段に向上している

◼︎ダートでの試乗も実施し、同車の持つポテンシャルの高さを披露した

アウトランダーPHEVは”四駆の三菱”を思う存分体感できる

 袖ヶ浦サーキットでプロトタイプのインプレッションを行った新型アウトランダーPHEV だが、いよいよ一般公道での試乗を行える事となった。

 僕自身、日本カーオブザイヤー2021-2022においてこのアウトランダーPHEVに最高得点を配したが、残念ながら本賞獲得はならなかったものの、テクノロジーオブザイヤーとして見事選出されたことは、三菱自動車の開発メンバーにとっても誇らしいことだっただろう。

 三菱自のPHEVシステムは2012年に登場していて、その頃からすでに高い完成度を誇っていた。当時「自動車界のノーベル賞もの」とも評していたのだが、新型になってさらにその技術レベルが高まり熟成され完成度が高められたことが何よりも評価のポイントだ。

 さて、一般試乗に乗り出してみると、まずキャビンが極めて静かなことに驚かされる。スタートストップボタンを押してシステムを起動してもエンジンはかからず、EVのままバッテリー駆動として走り始めることが可能だ。もちろんそのときどきの環境や充電の状態によってエンジンがかかることもあるが、日常的な通常使用領域においては、多くの場合に走り始めからバッテリーEVとして走行が可能となっている。

 道路に出るためにいくつかの段差を乗り越えたときに、そのハーシュの突き上げの弱さにまず驚かされる。20インチで255幅のワイドなタイヤを履いているにも関わらず、しなやかであたりの弱い乗り心地が得られていることは素晴らしいことだ。タイヤ自体は「ブリヂストン エコピア」といういささかSUVに履くブランドとしては相応しくないものとなっているが、走り出してみるとその静かさ、そして当たりのしなやかさなど有益な部分が多く感じられる。

 ドライブモードは7種類あり、デフォルトではノーマルモードとなっているが、そのノーマルモードにおいても発進時は前後荷重配分に応じた駆動力が設定されていて、極めて力強くスムースに走り始める。加速を始めるとその加速Gに応じた荷重移動を演算し、さらにそれに適した駆動力配分へと自動的に変化していくので、ドライバーはまったく違和感を感じることなく、ただスムースで力強い加速に圧倒されるばかりである。

 試しに少し強い加速力を与えてみてもエンジンはかからず静かなまま、本当に力強い加速フィールはバッテリーEV車のような驚きすら感じさせるものだ。

 とくに新型アウトランダーPHEVのような車体の大きなSUVがこれほどスムースかつ力強い加速を示すということは、一般の人はおそらくなかなかイメージできないことだろう。ガソリンエンジン車であれば大きくエンジンが唸りを上げ、けたたましい排気音とともに得られるような加速が全くもって静かなまま快適なまま得られるのである。

 一般道においてはその加速をどこまでも続けることはできないが、流れに乗れば直ちに定常走行に移り、そこからもエンジンがかからない静かな電動車としての快適な室内が維持される。 この場面においても乗り心地は極めてよく、足まわりそしてフロア剛性の高さ、また車体のしっかり感が伝わってきて、欧州の高級車に乗っているような質感の高さが感じられる。

 すでにプロトタイプのときも報告しているが、室内の作りこみは極めて豪華で丁寧、また、デザイン的にも洗練されていて操作性も良い。大型のセンターパネルや液晶メーターなど視認性にも優れ、車両情報もさまざまに用意されていてクルマの状況把握がしやすい。ナビゲーションやその他のスイッチ類の操作性も際立っている。

 ドライブモードはデフォルトのノーマルに加え、エコ、 ターマック、グラベル、スノー、マッドなど7種類が用意されていて、乾燥舗装路の一般道を通常走行するケースにおいてはエコかノーマルで充分である。

 コーナー部分での車体姿勢は極めてフラットで四輪がしっかりと接地し、S-AWCの非常に細かな駆動力配分やブレーキAYCの作動などドライバーがそれを感じることはないが、ライントレース性の良さなどによっておのずとその恩恵を受けているということになる。

 シフトレバーの横にはEVモードスイッチがあるが、これを押せばエンジンの始動を最大限遅らせ、バッテリーの残量に応じて電気自動車として使えるモードである。これを押さなかったとしてもアウトランダーPHEVの動力源は常にモーターであり、それをバッテリーから電力供給するかエンジンの発電によって供給するかの違いがあるだけだ。

 そのスイッチの横にはワンペダルスイッチがあり、これ押すことによってアクセルを戻した時に強めの回生ブレーキが得られ、ほぼワンペダルで難なく市街地の流れに応じて走らせることができる。

 また、トランスミッションは持たず、ステアリングにはパドルが備わっているけれども、これは変速のためではなく、回生ブレーキの強さを調整するためのものだ。さらに、右手のパドルを長く引き上げていれば、コースティングさせることもでき、電費や燃費の改善にもつながる。

 今回、一般道試乗コースを市街地中心に約1時間近く走らせてみたが、平均車速は35km/hほど。その場面で燃費は15.5km/hであった。2トンを超える車体のSUVが市街地をリッター15kmで走れるというのはかなり好数値だ。

 また、新型アウトランダーPHEVは、燃料タンクが従来45リッターだったものが56リッターに大幅に拡大され総航続距離が大きく伸びることとなった。単純計算でリッター15.5kmで56リッター使えば860km走行できることになり、さらにバッテリー満充電でバッテリーEVとして60kmも走れれば900kmを超える航続距離を引き出せるということになる。これはとくに三菱のSUVを好むヘビーユーザーの方々からは大きく歓迎されるところだろう。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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