自動車事業からは撤退してしまったサーブ
一方、サーブについては、最近、日本で実車を目にしたり、海外からのサーブに関わるニュースを耳にすることはほとんどなくなってしまった。
サーブの沿革を見てみると、各メーカーと車体やエンジンの共通化、合弁での開発事業を行ってきたことがわかる。
1980年代にはイタリアのフィアットと、また90年代には米ゼネラル・モーターズ(GM)と組んできた。筆者の実体験では、2000年代にGMの資本が入った際、日本国内や欧州内で各モデルを試乗したのだが、同じくGM資本のオペルと部品共通性が高く、在りし日のサーブらしさをまったく感じ取ることができなかった。
その後、オランダのスーパーカーメーカーであるスパイカーにサーブは転売されてしまうのだが、サーブとしての具体的な生産計画が表に出ることはなかった、と記憶している。
さらに、中国系企業によるサーブのEVメーカー化が模索された。2010年代初頭から半ばにかけて、スウェーデン政府関係機関による中長期的な自動車産業戦略を世界各地での学会やシンポジウムで拝聴したが、その中でサーブ再生計画が強調されていた。
結果的に、中国資本のEV関連メーカーによる実質的な企業活動を目にすることはなく、サーブというブランドについても受け入れ先が明確になっていないのが実状だ。航空機メーカーとして世界に名を馳せ、そして独自性豊かな自動車メーカーとしても活躍したサーブ。その雄姿が、なんとも懐かしい。