なぜマークIIIにならなかった!?
続く2代目も順調。先代のキャラクターやフォーマットは踏襲され、さらにプラットフォームをシェアするT180系セリカ同様、デュアルモード4WSも搭載。デザインも一段と洗練され、相変わらずリヤガーニッシュ内に点灯する『ED』の文字がカッコよく思えた。
そして3代目もT200系セリカと機関をシェアし、4ドアHTボディの流麗さも一段と昇華され、順風満帆の滑り出しとなったが、そのモデルサイクル半ばにして事態は急変する。というのはこの頃、男性諸氏にとっては非常にデリケートな事案に、EDという用語が世間一般で広く用いられるようになり、4代目カリーナEDが登場することなく現在に至っている。
無論カリーナEDが歴史に幕を下ろしたのは、ネーミングからではなく、居住性を犠牲にした4ドアHT時代の終焉によるところが大きいが、メルセデスCLSなどが元気な今、カリーナEDのようなクルマがあっても良いのではないか、と思えたりもする。でも、ふと気が付けば、今やそのEDという言葉自体を耳にする機会も減っており、敢えて略さずExciting Dreassyなんてグレード名のミニバンがあったら結構売れそうな気がするのだが、いかがだろうか。
もうその名前自体がお馴染み過ぎて、そもそもその意味など誰も考えなくなってしまったが、やはり謎の車名の筆頭と言えば、マークIIとその末裔マークXではないだろうか。
マークIIという名が初めて使用されたのは、1968年のこと。コロナとクラウンの間を埋める、ひとまわり大きく高級でエンジンも大きい、コロナの兄貴分たる新型車がコロナ・マークIIを名乗ったのである。外国車で使用されるMk2(マーク2)が2世代目、あるいは新型といった意味するものとは用法が異なったが、ニュアンス的には日本人にはしっくりくるものであった。
続いて1972年に登場した2代目マークIIだが、おそらく諸外国の常識に照らし合わせればマークIII(スリー)を名乗るはずだったが、なぜかマークIIの名が継承された。おそらく当時もマークIIIを名乗るべきではないか、という議論は社内でなされたのではないかと推測するが以後、マークIIの名は据え置かれ、言ってみればマークIIは“永遠の二代目”となったのである。さらにハイソカー・ブームの起爆剤ともなった5世代目に至っては、コロナの名称が外され、車名は単純にトヨタ・マークIIとなった。
こうなると、その車名が意味するのは“名もなき永遠の二代目”となり、そこに説明を求める必要はなくなったのである。ところが、“名もなき永遠の二代目”は2004年に突然ネーミング上は、「本当は俺、十代目なんだよね」とカミングアウトする。それがマークIIの後継車であるマークX(エックス)である。Xには主に「未知の」という意味合いが込められており、MARK自体も「目標」や「名声」という由来するものであるという説明がなされたが、やはり多くの人が連想したのはローマ数字の10であったはずで、マークIIを名乗っていればその10世代目に当たったことからも、それは決して偶然ではなかったと思われる。
ところが、初代マークXに続き、2009年に登場した2代目はマークXIは名乗らず、マークXの名前が継承されたのもまた面白い。そんな2代目マークXも10年という長いモデルサイクルを誇り、長く愛されたが、3代目マークXは登場せず、約半世紀にわたるマークIIの系譜は途絶えることになった。
昨今では自動車の車名やグレード名に「X」が用いられる場合、その多くは「クロスオーバー」を意味するが、実はかつてハイソカー時代のマークIIに慣れ親しんだ層が今求めているのは、ちょっと贅沢なクロスオーバーSUV、つまりその名を体現した、トヨタ・マークXだったりするのではないか、そんな気がしてくるのである。