未来のビジネスにトライした意味は大きい メカニズム的には、それぞれ既存モデル(ヴィッツやカローラなど)のFFプラットフォームを利用した派生機種といえるもので、個性的な内外装以外に見るべきものはないようにも感じるが、ビジネスとして見ると、いずれも先行したチャレンジがなされたことが印象的だ。
たとえば、WiLL Vi についていえば、秋冬コレクションとして新色を設定してみたり、2000年10月にはインターネット特別限定車を発売してみたりしている。いまでこそインターネットを利用した先行予約というのは当たり前のようになっているが、2000年の段階で、そうしたビジネスに挑戦したというのは、非常にはやいもので、そこでのリサーチがその後のネットビジネスにつながった部分はなきにしも非ずだろう。
WiLL Viのフロントスタイリング 画像はこちら
WiLL VS においても、1.8リッターエンジン+6速MTというマニアックなパワートレインのグレードを二度にわたり、インターネット限定販売を行なっているが、こうした売り方というのは、時代を先取りしていたのは間違いない。トヨタが怖いのは、こうしたチャレンジを他社に先駆けてシレッと実施してノウハウを手に入れているところで、WiLLプロジェクトへの参画はそうした面からも有益だったことだろう。
WiLL VSの走り 画像はこちら
さらにWiLLサイファでは「走行距離課金型リース」という新しいビジネスにもチャレンジしていた。コネクティッド技術の走りといえるG-BOOK端末から送られてくる走行データを元に、走ったぶんだけリース料金がかかるというビジネスモデルは、まさにCASE時代のコネクティッドとサブスクリプションを先取りしたアイディアだ。
WiLL CYPHAのリヤスタイリング 画像はこちら
さらに車両に通信モジュールを標準装備したり、トラブル時に救助を手配できる仕組みを搭載していたりと、完全にコネクティッドのひな形といえる機能を備えていた。
2002年の段階で、ここまでの仕組みをビジネス化していたことを思えば、いまのトヨタが進めるサブスクリプションサービスの背景には多くの知見が備わっていることがわかるだろう。まさにトヨタ恐るべしである。
WiLLプロジェクトが終了した段階では、無駄金を使ったという批判もあったが、WiLLプロジェクトを新しいビジネスモデルのテストケースとして理解すれば、実際のビジネス以上の成果を上げたといえるだろう。