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消滅した日はスバリストの暗黒日! 51年間「RR」「4独サス」「キャブオーバー」を貫いた軽トラ&軽バンの金字塔「サンバー」とは (3/3ページ)

消滅した日はスバリストの暗黒日! 51年間「RR」「4独サス」「キャブオーバー」を貫いた軽トラ&軽バンの金字塔「サンバー」とは

この記事をまとめると

サンバーはスバルの軽トラック/バン

■現在はダイハツのOEMだが、かつては自社で生産していた

■6世代のスバル製サンバーの歴史を振り返る

スバル製サンバーには6世代の歴史がある

 ダイハツ・ハイゼット/アトレーのフルモデルチェンジに伴い、SUBARUへOEM供給されるサンバーも新しくなった。新型には新型の魅力があるが、今も多くのスバリストが愛してやまないSUBARUオリジナルのサンバーのことを思い出す人もまた少なくないはず。

 そこで今回は、SUBARU製サンバーについてごく簡単に振り返ってみよう。SUBARU製サンバーは1961年デビューの初代モデルから、2012年の最終モデルまでじつに51年、6世代の歴史があるので、ここでは要点のみ振り返る。

 半世紀の歴史を持つSUBARU製サンバーだが、じつは最初から最後まで基本レイアウトはほとんど変わっていない。1958年に始まった初代モデルの開発段階で決定した基本レイアウトが半世紀にわたって通用するほど秀逸だったのだ。半世紀にわたり軽トラック/バンユーザーからの厳しい需要に高いレベルで応え続けられたのは、奇跡の偉業といってもいい。

 その後はどんな時代にあっても顧客からの指摘や要望に向き合い地道な改良を積み重ね、その結果、軽自動車の商用貨物車でありながら、広く愛される名車になったのだ。

 サンバーを名車たらしめた傑作レイアウトとは、リヤエンジンリヤドライブ(RR)、フルキャブオーバー、四輪独立懸架サス、ハシゴ型フレームの4要素が挙げられる。RRの採用はサンバーの少し前に生まれたスバル360での実績があったとはいえ、スバル360の派生車種では決してなく、商用貨物車として全面新設計されている。貨物車でありながら、重視したのは積載性や運搬性能ばかりでなく、安全性や快適性、操縦性などクルマとしての基本性能はほかのSUBARU車と同じ思想、同じ基準で開発。SUBARUの実直な姿勢もサンバーを名車に仕立てた要因だ。

 まずは初代サンバー。開発の指揮をとったのは、伝説のSUBARU偉人として崇められる百瀬晋六さんで、サンバーも「百瀬イズム」の結晶のひとつといえる。RR採用の狙いはスバル360との生産互換性もあったが、スバル360で実証された登坂性能や駆動力の高さは商用貨物車にも最適とされた。

 キャブオーバーについては迷わずの採用だったという。従来型のボンネット式トラックは積載性能が低く、先行する競合車に対抗するには積載性の高いキャブオーバーが不可欠だった。ボンネットのないキャブオーバーの難点である前面衝突時の安全性に対してはフロントまわりの外板を特に強化して対応。キャブオーバーならではの視界の良さや操縦性を高め、そもそも事故を起こしにくいクルマとなるよう設計された。この時代からすでに「0次安全」の意識は非常に高かったのである。

 RRレイアウトは荷台の前部から中央部分をギリギリまで低くできるので、FRやMRでは実現不可能な低床荷台が生み出せた。ハシゴ型フレーム構造の採用は大きな荷重への対応と荷台の低床化を狙ったもので、フレームは中空角材に酔えう箱型断面式とし、軽くて極めて剛性の高い構造を実現。車体設計を担当した室田公三さんによると、乗用車作りの前に手がけたバスの車体設計や流体力学を応用したスバル360のボディ作りで得た知見がサンバーでも生かされたという。さらに元をたどれば航空機作りの発想で、サンバーにも航空機メーカーのDNAが受け継がれたのであった。

 外観デザインはスバル360も手がけた佐々木達三さんで、丈夫で力持ちなどのたくましさをイメージ。「クチビル」とも呼ばれた愛嬌のあるフロントマスクは、歴代モデルの中でもっとも個性的だ。パノラミックガラスで視界を向上。スペアシートを使えば4名乗車も可能だった。

 スバル360でも採用された前開きドアは乗降性が秀逸。フロントサスは乗用車並みのトレーリングアーム式で乗り心地が良く、ホイールベースは1670mmと短いわりにRRの重量配分の良さでピッチングの動きが少ないことで定評がある。

 これらサンバーの美点はバンでも広く重宝されたが、バンよりもさらに過酷な状況で使われがちなトラックでもおおいに真価を発揮した。開発時にこだわって採用したキャブオーバーならではの荷台の広さは圧倒的で、サイド開きの低床式であるため重い荷物の積み降ろし性に優れる。

 さらにフラットな荷台は長尺物の運搬にも便利とされ、しかも上下2段に使える工夫も凝らしたことにより、積荷スペースは当時の軽貨物車のなかで最大とされた。荷台のガードレールを倒せば側方と後方の2方向から荷物の積みおろしが容易にできる点も大好評。サンバーの実用性の高さはたちまち評判となり、大企業から零細な自営業者まで幅広く愛され、当時の日本の様々なビジネスシーンで大活躍。軽トラック市場で3割以上のシェアを誇り、日本のモータリゼーションの発展に大きく貢献したのだった。

 当時の広告でうたわれた「皆様の繁栄を約束するトラックの国民車」は決して誇大広告ではなく、コピー通り日本の経済成長を支える一役を担ったのは間違いない。

 また、RRはそれ以外のレイアウトの軽バン/トラックと異なり、フル積載時も空荷の時も車体の姿勢が傾きにくい点も好評だった。常に同じ乗り心地が得られ、フル積載時に加速をしても車体が後傾しないのでライトの光軸もズレない。総じて軽トラック/バンでも走行中の疲労が少なく、乗用車同様の快適なドライブが楽めることも強みとなった。

 RRによる低床荷台は重心が低く、積載時には中央部分に荷重がかかるため、当時の軽トラック/バンとしてはコーナリング性能も秀逸。当時の日本の未舗装路だらけの狭い道でハンドリングを楽しめるクルマだったのだ。

 また、後端部分はエンジン搭載で高くなる代わりに、他の部分は極めて低くなる。エンジンは後傾して搭載するため潤滑が難しくなるが、スバル360での経験が生きた。騒音源はドライバーから遠い位置になり静粛性でも有利に。

 初代の美点は、そのまま歴代モデルすべてに共通する。

 まずは、秀逸な悪路走破性だ。四輪独立懸架サスによる接地性とRRならではのトラクションの高さは、50年以上にわたりサンバーの大きな強みとして輝く。他の軽トラック/バンでは得られないサスペンションストローク量の豊かさを感じるが、これは路面追従性の高さと四輪設置荷重が均一であるために得られる感覚。エンジンはEK32型強制空冷2サイクル直列2気筒を搭載。回転が上がるにつれ冷却効率がよくなるので、長距離の登坂や無理な使用に加熱の心配がない

 続く大きな美点は、使いやすく荷物に優しいこと。当時の乗用車と同じ形式のサスペンション採用により乗り心地が良く、積荷を傷めにくいことでも重宝された。悪路を走っても「豆腐の角が崩れない」話などが口コミで広まり、食料品など壊れやすい物を運ぶ業者にとってはなくてなならない存在となる。様々な業種で使われることにより、荷室の使い勝手や機能に対する要望やクレームも多岐にわたり、それらにしっかり耳を傾けながら地味に改善する姿勢も市場から高く評価された

 さらにサンバーは、初代からレジャー用途も強く意識して設計されたこと。使い勝手が良い上乗り心地が良く、しかも静粛性も高いことからレジャー用途でも重宝するようになり、ミニバンやRV車の先駆け的な存在にもなった。メーカーもそれを認識し、貨客兼用の万能車として外装色をオシャレにしたり、やや豪華な内張りやマットなど乗用車的な装備を充実させた「デラックス」グレードを追加。2連ワイパーや2連サンバイザーなどで安全性を向上。通風性能(まだエアコンがない時代なので)も高めている。

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