現行が「売れなかったところ」を認めて再出発! 工場まで作り替えちゃった新型ステップワゴンの秘密を直撃インタビュー (1/2ページ)

この記事をまとめると

■新型ステップワゴンの開発責任者にインタビュー

■こだわりのポイントや苦労した点を直撃

■工場を一部作り替える大規模なモデルチェンジとなっている

新型ステップワゴンは初代風のデザインが早くも話題に!

 1月7日に世界初公開され、今春に発表・発売を予定している、新型6代目ホンダ・ステップワゴン。ミッドサイズFF背高ミニバンのパイオニアとして一代にしてその存在感を確固たるものにしながら、三代目以降はライバルの攻勢に押され、迷走が続いている感のあるこの基幹モデルを、どのように進化させてきたのだろうか? 開発責任者の蟻坂篤史LPLに聞いた。

──新型ステップワゴンの企画にあたっては歴代モデルの反省をされたということですが……。

蟻坂 ものすごくやりましたよ(苦笑)。私がステップワゴンの担当になった際、ちょうどステップワゴンの販売が一番厳しくなっていた時期だったんですよ。「このままではまずい」という所からスタートして、「これをフルモデルチェンジするなら、一体何が問題だったのかを検証しないと、現行モデルのPDCA(Plan-Do-Check-Act)だけではダメだよね。売れていた時のこともちゃんと考えよう」と。

 ウチの会社はよく、全部を変えて、リスタートをかけるようなことをしていたんですが、「そうじゃないよ」と。「良い所は何が良かったのか、悪い所は何が悪かったのか、そういうことをちゃんと考えたうえで次を企画しないとダメだね」という所からスタートしました。初代と2代目は本当に売れましたからね……。

 ただ、その時は、競合がいなかったんですね。他車はまだキャブオーバーでしたから。そうすると、「最初に何を求めていたんだっけ?」という所から考えてみると、「家族がちゃんと移動できる、乗用車的なハコ」を作っていただけなんですよ。だからこそ、今回目指したのは「ハコ」なんです。「しっかりとしたハコを作ろう」と。それも、きれいな「ハコ」を。私がずっとデザイナーに言い続けていたのは「これはとにかくハコだから。ハコを作るんだよ。だけど、きれいなハコ」と。

──新型のデザインは本当に素晴らしいですね。すごくスッキリしていて……それは最近のデザイントレンドでもあると思いますが、それ以上にモダンさと、ホンダさんらしいポップな雰囲気があって。

蟻坂 ありがとうございます。なかなか……本当に苦労しましたけどね(笑)。この形になるまでに紆余曲折ありました。最初は全然違う形だったんですよ。最終形のようなスケッチはあったんですが、クレイを削って作る時に、全然違う形になってしまって……いろいろ凄かったんですよ(笑)。

 Aピラーの位置を引いたと説明しているのですが、最初はもっと引いていたんです。引きすぎたら、視界は良いけどキャビンが狭くなってしまう。でも出しすぎると、今度は視界が悪くなってしまう。ではどの辺が丁度良いか……と考えて決めたのが、あの位置です。全部試行錯誤しているんですよ。

 ボンネットの高さひとつ取っても、丁度良く見える位置にしましたが、あれももっと上げてみたんですよ。そうすると今度はクルマが大きく見えて、運転しにくくなってしまう。かと言って、もう少し下げると、今度は本当に見えなくなってしまう。ですので、ギリギリ見えるくらいの所に落ち着かせたんですね。運転している人から見てどうかで決めています。

──今回ベルトラインを現行モデルより上げているようで、絶対的な視界という意味ではこれはむしろ不利に思えますが……。

蟻坂 私が最初に「ともかくベルトラインを上げましょう」と決めていたんです。クルマのバランス的に、窓が大きすぎると思ったんですよ。クルマとしてボディが小さく見えてしまう。ボディが大きく見えるけれど、いざ運転すると全然大きく感じないようにしました。というのは、大きく見えると安心感があるんです。今回ドアに厚みが感じられると思うんですが、そうすると乗っていて安心できるなと。ですので思い切ってベルトラインを上げました。そうすると、ドアの面が広くなるので、高級感があるような気持ちになれる。

──なるほど。下げすぎると、バスなど商用車のようになってしまうと。今回、クリーンなデザインを目指したとのことですが、私は新型ステップワゴンを見て初代モビリオを思い出しました。でも初代モビリオは電車……トラム(路面電車)を狙っていましたよね。

蟻坂 そうなんですよ。初代モビリオは本当にベルトラインが低かったんですよ。とてつもなく低くて「凄いな」と思いましたけど。ドアと窓が1:1というくらい窓が大きかったので(笑)。あのコンセプトは凄いと思いましたが、ステップワゴンはあれとは違うなと。

──ステップワゴンは乗るユーザーがステイタスシンボルとしている所がありますよね。オラオラ顔を求めるユーザーが7割というお話がありましたが……新型のデザインは、どちらから先に着手したんですか?

蟻坂 またそういう……激しいことを訊きますね。ちょっと言いづらいですね(苦笑)。

──雰囲気としては「エアー」の方がスタート地点だったように感じられますね。パッケージングも含めて。ですからスパーダも、全然嫌味な感じがしませんよね。

蟻坂 はい、嫌味が一切ないクルマにしているので。ですので、本当に届けたいと思ったのは、素敵な暮らし。みんなが穏やかに安心して暮らせる生活を送るために作りました。クルマはただのアイテムなんですよ。主役は家族なんです。それに寄り添うクルマを最初に考えながらデザインしました。ですから、このクルマから降りてきた家族が「センスいいな」と見えるような……「このクルマ、格好良いな」じゃないんですよ。家族が格好良い。クルマが主役になってはダメなんですよ。

──御社の国内ラインアップ全体を見ると、オデッセイが販売終了となることが決定しています。必然的にステップワゴンが、ミニバンの中では車格がもっとも高いモデルということになりますが、装備内容を見ると、それを多分に意識されたように感じられます。

蟻坂 基本的に、付けられるものは付けました。ちゃんとしっかりしたものを、ただし「これはあるべきだろう」というものを考えて付けています。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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