この記事をまとめると
■いまやNAエンジンの軽自動車でも高速道路での100km/h走行が可能
■それでもやはりターボを選んだ方が疲労は少ない
■予算の問題でNAモデルを選びたい場合は性能差の少ないモデルにすると良い
速度や走行距離が増すごとにターボのメリットが目立ってくる
最近の軽自動車は、660cc、58馬力程度のNAエンジンモデルでも、パワーユニットの進化、以前より増したトルクやCVTとのマッチングの良さから、高速道路で100km/h走行することが可能だ。そもそも軽自動車の高速道路における最高速度が80km/hから100km/hに引き上げられたのは、ミレニアムの2000年10月。もう22年も前のことになるわけで、その時代から軽自動車が高速道路を上限、100km/hで走っていいことになり、軽自動車メーカーもそれに合わせて、高速走行でも無理なく走れる軽自動車を、NAモデルでも実現してきた経緯がある。
とくにダイハツの軽自動車用エンジンはずいぶん前から比較的トルクがあり、最近の軽自動車は全体的にNAとターボの性能差が小さくなっているのも事実。誤解のないように付記すると、ターボの動力性能が落ちたのではなく、NAの動力性能がスペックの数値以上に上がってきたということだ。
たとえば、2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーのK CARオブ・ザ・イヤーを受賞したホンダN-ONEを例に挙げれば、NAエンジンでも3気筒感はほぼなく、出足こそやや重々しい加速力ではあるものの、それがむしろ重厚な走りの質感の高さを演出。60km/hも出せばターボモデルに共通する車内の静かさとともに、平坦路であれば十分な動力性能と軽快な走りを味わわせてくれたりする。
さすがにエンジンを高回転まで回せばそれなりにエンジンノイズが高まってはくるものの、高周波ノイズが抑えられた厚みのあるサウンドで耳障りじゃないから決して不快ではない。しかも、乗り心地は、15インチタイヤを履くターボモデルと比べ、しっかり感とマイルドさを見事にブレンドした心地よさ、快適感があり、とくに荒れた路面や段差、マンホール越えでの振動、突き上げ感はより軽微。フラット感でも上回る印象なのである。
操縦性にしても、カーブやレーンチェンジでの安定感、しなやかにロールする、安心感あるロードホールディング性能など、ちょっと飛ばした程度ではターボモデルとさほど変わらず、乗り心地を含めたトータル性能では、むしろNAエンジン搭載のオリジナルグレードに好感が持てたほどであった。ちなみに足回りに前後スタビライザー、横力キャンセルスプリング、アジャイルハンドリングアシストといった操縦安定性を高める技術を全グレードに投入しているのも、そんな印象が持てる要因と言っていいのである……。
だがしかし、冷静な目で見ると、さすがにNAエンジンの軽自動車が高速道路の100km/hクルージングが可能だとしても、ターボとの差は、速度が増すほどに、距離を重ねるほどに広がってくるのも事実。つまり、NAエンジンモデルが日常域でいかに静かに軽快に走ってくれたとしても、車速が上がれば持てるパワーをギリギリまで使うことになりがちで、同時にエンジンノイズが高まり、車内は一気に騒々しくなる。車内騒音が乗員の疲労度につながるのは当然で、長時間の高速走行では、やはりパワーに余裕があり、より低回転で静かに走れるターボモデルとの差が、運転疲労、乗車疲労という点で大きくなるということだ。