韓国で「尿素水」が不足して物流に打撃! そもそも「尿素水」はディーゼルエンジンにナゼ必要なのか? (2/2ページ)

中国とオーストラリアの関係悪化で尿素が不足

 なお、ディーゼル機関の排出ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)の発生量の関係は、燃焼温度が高くなると窒素酸化物(NOx)が増え、粒子状物質(PM)は減少、逆に燃焼温度が低くなると窒素酸化物(NOx)が減り、粒子状物質(PM)が増えるというトレードオフの関係にある。日産ディーゼルのFLENDSは、燃焼温度を上げて粒子状物質(PM)の発生量を減らしておき、増えた窒素酸化物(NOx)を尿素水との反応で処理しようとした考え方である。

 ちなみに、これの逆、燃焼温度を下げて窒素酸化物(NOx)の発生量を減らし、増えた粒子状物質(PM)をディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)で取り除こうとする方式も存在したが、尿素の噴射システムと微粒子捕集フィルターの併用により、現在は燃焼温度の調整が不必要な方式(温度依存性のない排気浄化システム)が主流となっている。

 さて、現在問題となっているのは、尿素水を作るための尿素の供給が滞っていることにある。尿素水の原料となる尿素は、ペレットの状態に加工されたもので、原料は石炭に頼る状態だ。その石炭、最大の輸出国はオーストラリアだが、それを受け入れ尿素に加工する中国との関係が悪化し、中国が尿素の輸出を調整(国内需要となる農業肥料用を優先)する事態が発生。結果、韓国での尿素水不足が大きな社会問題として露呈することになったわけだが、日本でも尿素全体の3〜4割を中国に依存(5割程度は日本国内生産)する状態で、昨年末頃から尿素水不足が深刻な問題となっていた。

 現状、日本の対応は、中国以外の国から新たな輸入ルートを確立するとともに、国内での尿素生産を増やす増産体制を強化。早ければ今月中にも尿素水不足に対してメドが立ちそうな見通しだという。世界的なコロナ禍により、部品の輸出入による生産体制への影響が直接的に表れた自動車産業界だったが、今回は国際関係による尿素の供給が不安定化したことで、再び「世界市場」という現在の経済構造を強く思い知らされた騒動である。


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