EVで他社に先行する日産はEV普及後の社会を考えている
また、すでに初代リーフ発売前に設立したバッテリー再利用などを行う事業を、欧米に展開すること、さらに、2020年代の半ばにはV to X(EVからの電力供給)と、家庭用バッテリーシステムの商用化により、EVで使い終えたリチウムイオンバッテリーの二次利用を促進する計画を述べている。
それら実現ため、研究開発部門の先進技術領域に3000人規模の新規採用を行うとしている。つまり、単にEVへの転換だけでなく、総合的な事業視点と、新たな雇用創出も併せて進行させているのである。急速なEV化が雇用を危うくするとの短絡的な着想とは大違いだ。
トヨタを含め欧米の自動車メーカーは、EVを作り販売することにまだ精一杯だが、12年前にEVを市販した日産は、総合的な視点で脱二酸化炭素事業へ打って出ることを「アンビション2030」で宣言したのだ。EVを導入する意義を含めた未来に対する明確な目標を提示できているのは、現時点で日産だけだろう。
単に全車をEVにすれば問題が解決し、未来が拓けるのではない。社会全体の仕組みとしての移動やサービス、そして暮らしのなかのエネルギー活用や管理といった視点まで含めて初めて、EVへ転換する意義が明確になるのである。福島県浪江町で日産がはじめた、EVの充放電システムを活用したエネルギーマネージメントシステム実用化の検証はその象徴ともいえ、EVを販売していなければできない事業だ。
日産は、いまさら全車をEVにするなど声高にいわなくても、日産にとってそれは当然の行く末であり、時間とともに解決されていく姿なのだと私は思う。そこをきちんと報道するのが、ジャーナリズムのなすべきことである。